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上乃家さんへ

2011年06月26日

 へこりと at 15:45  | Comments(2)
水無月 九

権堂は、子供のころから通っていた。
イトーヨーカドーができる前、プラモデル屋さんがあった。
こづかいをもらうたび、自転車をとばして行っていた。
長野電鉄が地下へもぐる前のころで、
駅の前に養老の瀧があり、夕方の早い時間から
一杯やっているおじさんたちの姿が見えた。
酒の味を覚えてからは、もっぱら陽が暮れてから
友だちと連れ立って歩くようになる。
チェーン店の居酒屋から、地酒の品揃えの良い店へと
好みも変わり、みんなでヨッパになっていた。
あのころ夜おそくまで、酩酊したおじさんたちで
アーケードもにぎわっていた。
景気の波がひらたくなって、老舗の料理屋や割烹が
つぎつぎと商いをやめる。
寿司屋に蕎麦屋に鰻屋と、目に馴染んだ個人の店でも
店仕舞いをするところがあった。
それでも変わらず良い商売をしている店や
新しく若い人が始める店もある。
板前のからさわ君が店を出した。
アーケードの真ん中、映画館の向かいのビルの二階で
名は 上乃家という。
先代の御主人が亡くなった後、そのまま名前を引き継いで
始めたのだった。
高校を卒業してから広島の大学へ進学した。
文学部を専攻したのに、
そのまま広島で板前の道に進んだのだった。
カウンターが七席に、その奥に板張りの入れ込みがある。
メニューを見れば旬の肴の名前が並びそそられる。
稚鮎の天ぷらをつまみながら広島の酒を酌んだ。
宝剣は、その名のとおりほど良い旨みがスパッと切れて
男っぽい味がある。
雨後の月という、風情のある名の銘柄は
女っぽい、やわらかな味わいが好い。
肴が良く、酒も良い。
おまけに働いている女の子がとびきりきれいでみとれる。
ぼくとつな顔をしているくせに、魚を選ぶ目と同様、
女性を見る目も見識が高いと感心をした。
このご時世、権堂での商売も楽ではないとうかがえる。
末々長くの営みをと期待したい。


  


ブランデーと梅酒と

2011年06月24日

 へこりと at 16:01  | Comments(0)
水無月 八

ブランデーを頂いた。
洋酒といえば、ウイスキーはよく飲むものの
ブランデーはめずらしい。
太陽にほえろで育った世代は
ブランデーと聞けば、上等のスーツに身をつつみ
グラスを傾けているボスの姿を連想する。
お金持ちの人の酒。
そんなイメージが残っていたのかもしれない。
ワインは赤でも白でも好きなくせに
蒸留したブランデーになじみがなかったのは
酒飲みの身としてはずいぶんうかつなことだった。
甘酸っぱい旨みが口に含めば心地いい。
調べてみれば、安いものから高いものまで
値段に幅がある。
ふところ痛めず買える中で、どれがいちばんお薦めか
バーテンダーの井浦さんに教えを請いたい。
昨年の夏は太陽のいきおいが半端ではなかった。
ちまたに馴染んだハイボールを家でも飲むこと多くなり、
冷蔵庫にビールといっしょに炭酸水が欠かせない。
頂き物のマッカランの十二年で作って飲んでいたら
訪ねてきた友だちに、
ぜいたくなハイボールをとあきれられた。
ブランデーで作ってみたら、爽やかさが増して
より暑い日にふさわしく、夏の楽しみがひとつ増えた。
今年も梅の実を頂いた。
毎年友だちが獲れると持ってきてくれるのだった。
このたびはいつもよりたくさん頂いたから
梅酒もひと瓶よけいに作ることとなる。
近所のモンマートで、愛知の上等なみりんを買い込んでくる。
青々とした実を洗って、瓶に入れ、とくとく注ぐ。
雪の舞い散るころになれば、梅の酸味とみりんの旨みが
ほどよく溶け合って、美味しい梅酒が出来上がる。
みりんで梅酒を作ります。
会計のとき、モンマートの奥さんに話したら
ぜいたくな梅酒ねえと言われた。まったく。
甲斐性もないくせに、
旨い酒のためならばと気合いが入る。
この費用と気力をもうすこし、
他のことにまわせぬものかとときどき思う。

  


〆張鶴を求めて

2011年06月21日

 へこりと at 13:32  | Comments(0)
水無月 七

毎日日本酒を酌んでいる。
気に入りの銘柄のひとつに村上の〆張鶴がある。
ぴんとした名前に違わぬ芯のある味わいで、
飲み屋で見つければかならず頼む。
上越市に住んでいる知り合いがいる。
年輩の飲み仲間の方で、月に一度長野へ来たときに、
宴の席をごいっしょさせていただいている。
越後の酒が好みだという。
〆張鶴も好きなのに、
あいにく近所に売っている酒屋がないとこぼす。
それならば送りましょう。
須坂の酒屋の新崎さんを思い出し、請け負った。
よく晴れた休みの日、
バイクにまたがりとことこと出かけた。
町を抜け、小布施に通じる道を行く。
パチンコ屋の信号を曲がり、まっすぐ行って曲がった先の
畑の前に店がある。
純米吟醸と特別本醸造を一本づつお願いして、
まあ、お茶でもとごちそうになった。
旦那さんが酒屋を始めたのは、平成元年のことだという。
当初は義理の絡みもあって、飲食店に売り込みをせず
店売りだけで商売を始めたという。
その頃、知人に頂いた〆張鶴の味が気に入って、
蔵元に取り引きをしたいとお願いをした。
すでに人気のあった銘柄は、なかなか扱いが叶わない。
〆張鶴を扱えるなら、他の銘柄はなくてもいいと
思いを伝えたところ、先代の社長がその意を酌んでくれ、
二年ちかく待って、扱うことができるようになったという。
蔵元から取り引きを始めたいと電話をもらった日、
あまりのうれしさに、三人の子供たちに
それぞれ一万円づつ小遣いをあげたという。
お付き合いが始まって二十年。
今でも春と秋には蔵元を訪ねてゆくという。
新崎さんは、三番目の息子さんが修行先から戻ってきて
いっしょに商売を営んでいる。
〆張鶴に八海山、越の寒梅に真澄に樽平、
すでに名の知れた銘柄に、
澤の花に山和に写楽に大那、
小さな蔵の若手の造る銘柄が増えた。
そのためにお酒を管理する冷蔵庫も増やしたという。
冷蔵庫の電気代払うために働いているようなもんっすよ~。
いつぞや息子さんが笑って話していた。
旨い酒にありつくために働いている身は
がんばっている酒屋さんを応援したい。

 


そう言ってもらえると救われる・・・

  


友だち夫婦と

2011年06月19日

 へこりと at 17:44  | Comments(2)
水無月 六

学び舎は、城山小学校に柳町中学校に長野吉田高校だった。
ひんぱんに会っている同級生もいれば
ずいぶんご無沙汰している同級生もいる。
すでに彼岸に旅立った同級生もいる。
久しぶりの友だち夫婦と会った。
旦那も奥さんも中学校の同級生で、
もうひとり同級生を交え、四人で一献酌み交わす。
友だち夫婦には三人の男の子がいて、
兄弟でもそれぞれ性格がちがうという。
いちばん上のお兄ちゃんは大学生で、
親元をはなれてひとり暮らしをしている。
親に電話をかけてくるのは
きまってお金が乏しくなった時ばかりだから
今度かかってきたときは、
そんな新手のおれおれ詐欺にはひっかかりませんと
言ってやろうかと笑う。
名前を聞けば、三人ともひびきのいい、
味のある名前をつけている。
旦那の名前が、かんたんな漢字ひと文字の名前だから
子供にはすかすかしていない名前を付けたかったと
奥さんが笑い、旦那はとなりで苦笑いを浮かべている。
同級生の話に、世話になった先生や、世話になったようで
じつはあんまり世話になっていなかった先生の話に杯がすすむ。
きれいだった他のクラスの女の子の話題が出れば、
うむ、お会いしたいとそそられる。
旦那は、子供を教え育てる仕事をしていて、
長らく携わっている中で
子供の様子もずいぶんと変わってきたという。
話を聞けば、ひとすじなわではいかない大変さがうかがえる。
宴の途中で電話が鳴って、明日の仕事の予定が入り、
ではそろそろお開きにと腰を上げた。
旦那は以前大きな病気をして、家族にも心配をかけたという。
おでん屋で締めようかと、いっしょに帰る同級生と向きを変えれば
たいらではなかった道のりを、連れ添い合って歩いてきた
友だち夫婦の背中が見えた。
ほんとに似合いの夫婦だわい。
今しがた別れたふたりを見送った。

  


手土産の刺身で一献

2011年06月15日

 へこりと at 12:03  | Comments(2)
水無月 五

ひとり暮らしの身にありがたいのは
訪ねてきてくれる輩にめぐまれていること。
この日は花屋の若旦那と家飲みをした。
セブンイレブンで、ビールとシュウマイと
ポテトサラダとチーズを仕入れて待っていたら
角煮と、鯛にとびうおにほうぼうを刺身にして
持ってきてくれた。
酒の肴も自分で作れば安く上がると、
若旦那は、肉も魚も自分でさばいて晩酌をしている。
このごろ日本酒を酌むようになったという。
気に入りは、飯山の水尾の特別純米で、
きれいな旨みは、信州を代表する銘柄のひとつと思う。
山形のほまれこざくらの栓を開けて酌み交わす。
澄んだ味わいが飲みやすく、
ふたりなら余裕で一本空いちゃうなと話す。
せっかくだから飲み比べをしてみるのもおもしろい。
冷蔵庫の一升瓶を並べて、かわるがわる味見をした。
しらぎくに、十九に山和に伯楽星、
それぞれに個性ときれいな酸があり、
飲み飽きせずに酔いへとみちびいてくれる。
しらぎくと十九はともに一升二千円の本醸造で、
気楽に晩酌をするときに、安くて旨いのが好い。
山和の特別純米は、原酒なのに重たくなく、
ほどよいコクと切れの良さに、やはり旨いとうなづいた。
本品は、東北地方太平洋沖地震の震災より
無事救出されたお酒です。
十分な検品の上、品質的にも問題ないと確認しておりますが
万が一お気付きの点がございましたらご連絡ください。
伯楽星に貼られたラベルを読めば、
傾いた蔵で試飲をしている蔵元の姿が思い出され、
洗練された味わいにしみじみとなる。
酒の話をしながら酌みすすめば、
地酒の雄の十四代を、若旦那はまだ飲んだことがないという。
十四代が注目をあびてから、美味しい酒を造る
地方の小さな蔵が増えてきた。
そのあいだ、あっちの銘柄こっちの銘柄酌みながら
なんだか無駄に歳だけ重ねてきたような気がしないでもない。
それでも旨い酒にて和やかに過ごせる縁があるのも
酒好きゆえのことと、あまりふかく考えない性分でいる。
角煮も刺身もきれいさっぱりたいらげた。
十四代、手に入れたらまたやりませう。

  


母になる。

2011年06月11日

 へこりと at 12:36  | Comments(0)
水無月 四

こんにちは。
久しぶりの人が訪ねてきてくれた。
長野の短大にいたときに、
うちへ足を運んでくれるようになった人で、
卒業した後にいくつかの職場で働いて、
四年前に松本へ引っ越して行ったのだった。
目もとの涼しい顔はあいかわらずなのに、
お腹が大きくなっていておどろく。
おめでたですかあとお腹をさわれば、
えへへへと恥ずかしそうに笑う。
松本へ引っ越してから彼氏ができた。
今年の二月にめでたく結婚をしたという。
そのわりにお腹が大きいのは、
できちゃった婚なのですなとわかる。
予定日まであと二週間で、
お産のために実家に帰ってきたのだった。
旦那さんはひとつ年上で、諏訪の大きな会社に勤めているから
今は諏訪湖のそばの社宅で暮らしている。
子供ができて、結婚が決まったら
旦那さんの方が、マタニティーブルとマリッジブルーになってしまった。
父親になること、家庭を持つことに、いくじなくくよくよしてるから
いい加減にあきらめろとはっぱをかけたという。
生まれてくる子は女の子で、
名前を考えていてもなかなか意見が合わなくて困るという。
旦那さんは女の子らしいかわいい名前を付けたい。
かたやこちらはさっぱりとした名前にしたいといい、
爽やかな緑の季節に生まれる子にどんな名前を託すのか、
親になる人の楽しみになっている。
実家ではおかあさんに料理を習っているという。
おかあさんは栄養士の免許を持っていて、
介護施設でご飯を作っているから手際がいいと感心している。
たくさんの料理の味を身につけて、家族のために腕をふるうのが
これからの仕事になってゆく。
今年三十五歳になるといい、
知り合ってから十七年にもなるのかと、月日のたつのが早い。
会わないあいだに、ひょうひょうと奥さんになり、母親になる。
あどけない笑顔を眺めながら、しなやかな強さだなあと感心をした。




  


花を愛でるように

2011年06月09日

 へこりと at 17:36  | Comments(0)
水無月 三

この頃は、善光寺の御朝事を告げる太鼓の音で目が覚める。
三百メートル離れた家の中まで聞こえてくるのだから
気合いを入れてたたいているとわかる。
今年の梅雨入りは早かった。
雨の冷え込んだ日がつづき、しまい込んだストーブを
また引っ張り出したりしていた。
夜中の雨が止んだ朝、善光寺まで散歩にでかけた。
霧におおわれた空の下、境内を歩く人の姿もまだ見えない。
本堂に入ると、はっぴを着たおじさんたちが
御朝事の準備をしているところだった。
威勢よく太鼓の音が鳴りひびくと、本堂の奥の扉が開けられる。
それに合わせるように、仲見世の通りを歩いてくる
おじいさんやおばあさんの姿もぱらぱらと見えてくる。
なかなか咲かなかった玄関先のつるばらが咲き始めた。
待っていたぶん、よくぞ今年も咲いてくれましたの気持ちも増す。
花壇に蒔いた蕎麦の種が早々に芽を出して、すくすくと伸びている。
駐車場のわきには、名前の知らない黄色い花が咲き、
家の裏ではどくだみの群れが青々と葉を茂らせ、
開くのがもうじきになっている。
知り合いにむずかしい恋愛をしている女の人がいる。
ぎくしゃくした関係で、不安定な気持ちの日がつづく中
いろいろ思い悩むことがあっても自分から縁を切ることはしない。
そこだけを自分に言い聞かせていると話してくれたことがある。
久しぶりに道ばたで会ったら、
ずいぶんきれいでやさしい顔つきになっていて
落ち着いた暮らしができているのが伝わってきた。
一日過ごす中でも気持ちにむらがあり、自分を持て余すことがある。
草花を愛でるときのように、静かな気持ちでいつも居られる。
言い聞かせることを言い聞かせ、往きたい。










  


腰痛にあえいで

2011年06月08日

 へこりと at 09:03  | Comments(6)
水無月 二

腰を痛めた。
夜中に痛くて目が覚めた。
寝返りをうつこともままならず、眠気もすっかりふっとんだ。
晩酌をして布団に入るまではなんともなかった。
酔ってぶつけた覚えもなく、どうしたことかと首をかしげる。
もともと腰痛持ちでいる。
仕事柄中腰の姿勢が多く、職業病とあきらめている。
整骨院で揉んでもらえば楽になるからと
気にもしていなかったのに、
このたびの痛みは気にせずにはいられない。
なんとか布団から這い出して、座ってみたり歩いてみたり。
そのたびにずきっときて、動作がのろくなる。
店を開けて、朝いちばんのお客さんのカットをしていたら
腰の痛みに加えて、左足の太ももやふくらはぎが
つりそうになり思い出した。
二日前の休みの日、鈍った体を動かそうと走りに出たのだった。
夜中に降りつづいた雨が止み、
涼しい風が気持ちよいと距離を伸ばした。
犀川沿いの道路を抜けて、日赤病院の前を通る。
長野大橋から青木島へと曲がり、
丹波島橋から、ふたたび犀川沿いの道を通って戻ってきた。
走る前も走った後も、ろくに柔軟体操をしなかったから
足にかかった負担が腰にきたのだと察しがついた。
次の日に出ないで、二日もたってから痛みがでるのも
若くない証拠とよくよく実感をする。
熱冷ましに買ったみみず一風散が、体の痛みにも効くと思い出し
一服飲んで、うつぶせになって寝た。
翌朝、あれほどひどかった痛みがうそのように軽くなって、
楽々と起きることができ、おどろく。
みみず一風散、ほんとによく効くなあ。
またしてもみみずの力に助けられ、みみずさまさまと感謝をした。
走ることひとつにもO型のおおざっぱさが出て、ていねいさが足りない。
暑い日の夕方、走りに出ようとして、今度はしっかり準備運動をした。
みみず一風散は、仁王門前の小山薬局さんで売っている。




  


さみしいワイン

2011年06月02日

 へこりと at 14:34  | Comments(0)
水無月 一

ワインを飲みたくなるとこまつやさんへ行く。
自然派ワインを赤白三種類ずつ置いていて、
ときどき銘柄を入れ替えている。
いつ伺っても、好みのしなやかな味の銘柄の有るのが
ありがたい。
蕎麦屋、飲み屋はひとりの行きつけがあるものの、
ワインとパスタの店には馴染みがなかった。
歩いてすぐのところに在ることと、
パスタはもちろんワインのつまみの、
有機野菜を使った前菜が美味しいことと、
なによりも、気のおけない接客ぶりが気持ち好く、
行くたびいつも長居をしてしまう。
駅前の居酒屋でひとりで飲んでいた晩に、
残念な知らせが届く。
飲み仲間の蕎麦屋の旦那から、
こまつやさんのスタッフのパティが
店をやめることになったとメールがきた。
開店以来の親しみやすい接客に
すっかり馴染んでいたから、それはさみしいこととなる。
最後の日、蕎麦屋の旦那と連れ立って、足を運んだ。
世話になったお礼の花束を渡せば、
ありがとうございますと、ふかぶか頭を下げられる。
カウンターの奥に腰を下ろして、
パティ、おつかれさまと、生ビールのグラスを上げる。
前菜の盛り合わせを頼み、ワインを一本注文する。
口もときゅっとひきしめて、ソムリエナイフをあやつって
コルクを抜くさまは、きれいでかっこよいとみとれていた。
目にできるのも、今日で最後と思ったらさびしいねえと、
蕎麦屋の旦那としょぼんとなって飲んだ。
開店して以来、こまつやさんもパティも、
すっかり古い町に馴染んでいた。
近所の人や常連さんが入れ代わりやってきては
パティにあいさつをしてゆく。
そのたびお礼を言って、外まで見送って握手をして
別れを惜しんでいる。
福島に御実家のある人で、このたびの震災では
ずいぶん心配な思いをした。
さいわい御家族に被害はなかったものの
心労から体調をくずしたこともあったという。
ゆっくりと気持ちと体を休めてもらい、
新しい一歩を踏み出してもらいたい。
ありがとうございました。
ゆっくりさせてもらっての帰りぎわ、お礼を言われ、
それはこっちの台詞だよ。
変わらぬ笑顔の接客に、酔っ払いのおじさんは
いつも楽しく過ごせたと頭を下げて、見送っていただいた。