インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8

アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 11人
オーナーへメッセージ

ワイン週間

2013年05月30日

 へこりと at 12:27  | Comments(0)
皐月 十三

飲み会のかえり、
同行したふたりと締めの一杯をと、
こすげさんに立ち寄った。
松尾に豊賀に幻舞に聖山に棚田に北光正宗、
十九に積善と、近隣の地元の日本酒があるから
鴨わさをつまみに酌んだ。
互いのグラスを交換して比べれば、
それぞれ好みはあるものの、
出来の好さにはずれがない。
飲み屋に行けばこの頃は、全国の名の知れた
銘柄を容易に口にできるようになった。
堂々と渡りあっていけるお蔵さんが
長野に増えたのはよろこばしいことだった。
最近は、日本酒とともに長野のワインもおもしろい。
いつぞや、友だちの結婚式に招かれたことがある。
足を運んだ山の上のレストランのオーナーは
ワイナリーも経営されていて、
何度か飲んでも口に合わず、
それっきりになっていた。
ところが披露宴で出された赤と白、
ひさしぶりに口にしたら、
ずいぶん味わい深くなっていて、
たまげたということがあった。
名の知れたおおきなワイナリーに加え、
個人のかたのちいさなワイナリーも増えてきて、
たまたま買ったり友だちからいただいたり、
家飲みの宴の席に持参してもらったり、
飲む機会にめぐまれれば、そのたび味の好さが
印象にのこるようになった。
先日近所の酒屋で、
安曇野ワイナリーの赤と白をもとめた。
ラベルには、
長野県原産地呼称管理委員会認定の
赤いシールが貼ってある。
原産地と品質を保証する制度は、
なにかと話題の多かった以前の知事さんが
日本で初めて作ったものだった。
これだけはりっぱな功績だったなあと
ぽつり酒屋の旦那がつぶやいた。
来月は、飲食店や酒屋の有志のみなさんが、
長野のワインに親しんでもらうイベントを行なうという。
ひととき通じてたくさんのかたがたが
あたらしい飲み手になってくれれば好い。
毎日がイベントのように酔っぱらっている身は、
すこし控えめにしなくてはいけないのだった。



  


思い出話に

2013年05月28日

 へこりと at 13:00  | Comments(0)
皐月 十二

馴染みのおでん屋の女将さんが亡くなって
もうすぐ半年になる。
手伝いに来ていた息子さんがそのままあとを
引き継いでくれたのは、
拠りどころがなくならず、なによりのことだった。
常連さんも欠けることがなく、このごろは
あたらしく通いはじめる客も増え、
ちいさな店内が満席になることもある。
孤軍奮闘、おでんを盛ったりネギ塩豚を炒めたり、
徳利に酒を注いだり。
知り合って一年、せまい厨房でのかっこうも
すっかりさまになってきた。
もともと旅をして暮らすのが好きだった。
北海道で昆布を採って暮らしたり、
沖縄でさとうきびを栽培して暮らしたり。
旅先で知り合った友だちが、はるばる店まで
訪ねてくることもある。
虫が騒ぎはじめて商いをやめぬよう、
ひまな二月と八月はまるまる休業して
旅に出るのもよいではないか。
常連さんも快く受けいれてくれると、
このごろはそんな話をしているのだった。
女将さん家族の古い友だちが横浜から
お参りに訪ねてきてくれた。
子供がちいさかったころから
家族ぐるみの付き合いをしてきたといい、
息子さんに女将さんの旦那さん、友だち御夫婦の
なつかしい宴の席に、交ぜてもらい酌み交わす。
息子さんが高校生のときに
長野へ遊びに来たことがあるという。
撮ったビデオをCDに編集してきてくれたといい、
高山村の温泉でくつろぐ
女将さんと旦那さんを観ながら、
みんな若いねえと話が盛りあがる。
笑顔で話す女将さんに、
おふくろの声、ひさしぶりに聞いたなあと
ぽつり息子さんがつぶやいた。
旦那さんが、
生前女将さんがつくったという短歌を見せてくれた。
雷鳴が 轟く前の 雲行きは 
流れるごとく あふれるごとく 
病になってもじたばたせずに、ありのままを
受けいれていた人柄がうかがえる。
思い出話をする旦那さんを見ていれば、
まだせつない想いをかかえているとわかる。
旧知のかたがたとのひとときに、
うれしそうに杯をかさねる姿が目に残った。



  


筋肉痛日和

2013年05月24日

 へこりと at 12:40  | Comments(0)
皐月 十一

筋肉痛に苦しんだ。
休日、篠ノ井に出かける用事ができた。
うらうらとした陽気の日で、家から十二キロ、
すこし長めの散歩にと、歩いてゆくと決める。
県庁の前をすぎて、犀川沿いの道を行く。
陽射しが川面に照りかえり、
里山の緑が、濃淡陰影ふかく冴えている。
丹波島橋をわたり車のつづく国道を
東へ行けば、
川中島のあたりから汗が止まらずに、
Tシャツ一枚でじゅうぶんな、
夏日の陽のつよさだった。
篠ノ井にはかつて父の実家があって、
子供のころ、父に連れられて遊びにきていた。
下駄屋をしていた父の兄が亡くなると
息子さんがラーメン屋に建てかえて商いを始めた。
今ほどあちこちに店があるときではなかったから、
味の良さが評判を呼び、
ずいぶん繁盛していたのをおぼえている。
線路沿いの実家は新幹線が開通したときに
立ち退きになり、
ひさしぶりに界隈を歩いてみたら
すっかり面影が変わり昔を思い出せない。
駅前の通りに出たら、昼どきに人の姿もすくなく
ぽっかりと間が空いている。
ランチの看板の出ている居酒屋で、
ソース焼きそばをつまみにビールを飲めば、
さんざん歩いたあとの一杯は、
ことのほか喉にしみわたる。
さびれた町の客のいない飲み屋のひとときは
男やもめにふさわしいわびしさがあるのだった。
次の日起きたら体が重く、
腰と太ももがうごかすたびに痛い。
歩いたせいとわかるものの、
日ごろおなじほどの距離をランニングしていても
こんなことはないから、
走るほうが体が楽なのはどういうものかと
いぶかしい。
おまけに紐がゆるゆるのコンバースで行ったのも
いけなかった。
両足に靴ずれができて小指に血豆ができている。
ランニングシューズを履くべきだったと
風呂に入るたびにしみる傷口に後悔した。
いくつになっても、
うかつに傷をつくるのはなさけのないことと、
治るのを待っているのだった。






  


ワインになる日を

2013年05月21日

 へこりと at 16:52  | Comments(0)
皐月 十

晩酌でときどきワインを酌んでいる。
まだ酒の味に慣れぬころ、
飲食店を営むいとこの店で飲ませてもらったのが
美味しいと思った始めだった。
ワインに詳しい酒屋さんと知り合いになり、
御主人の開くワインセミナーに
参加したこともあった。
ひととおり知識を教えていただいて、
手のだせぬ、高価な銘柄も試飲させて
もらったのに、
今では学んだこともすっかり忘れてしまい
なさけない。
天気のよい休日、坂城町へ出かけた。
この町でワイン用のぶどう栽培を始めた
友だちがいるのだった。
ここ近年、
信州の東から北へ流れる千曲川沿いに、
ちいさなワイナリーが増えている。
飲む機会にめぐまれて利いてみれば、
それぞれに美味しく、
信州のワイン、好いですなあの気分になる。
近隣の地域に倣い坂城町も、
醸造用ぶどうを作ることに相成った。
もともと巨峰で有名な町だった。
この間飲んだ巨峰のワインは、
さわやかな甘味と酸味が好かった。
待ち合わせをして連れて行ってもらえば、
道すがら、なだらかな斜面にぶどう畑が広がって、
いっぱいの陽を浴びている。
ワイン用のブドウ畑はふたつあり、
それぞれに、赤ワイン用と白ワイン用の品種の
苗木が植えられていた。
この春の冷え込みは、土に携わるかたがたに
ずいぶんの痛手を与えたと聞いた。
自然相手の生業は、
予期せぬ出来事に左右されることがある。
子供のようなちいさな苗木が無事育ちますように。
願わずにはいられない。
ぶどう畑から眺めれば、緑のむこう、
はるかかなたの山並みに青い空が広がっている。
田んぼには水が入り、夏になる気配をうかがわせる。
おだやかな好いところと、
一日のんびりワインを飲んでいたくなる土地だった。
苗木が育ちワインになるまでに五年かかるという。
その前に飲みすぎて昇天せぬように
よくよく気をつけなくてはいけないのだった。


  


新芽の時期に

2013年05月18日

 へこりと at 14:12  | Comments(0)
皐月 九

コンビニで買い物をした帰り、
歯切れのいい音をひびかせて
ホンダのCB400が坂道を上がっていった。
走り去るむこうの青い空に、
バイクに好い季節になりましたなと
見送った。
すぐあとから、水色のクロスバイクも上がってゆき、
男の子が腰をあげて、力づよくペダルをこいでゆく。
ここのところ五月晴れの日がつづき
すがすがしい。
日がな一日鳥のさえずりが聞こえ、
むかいの松木さんのお宅のつたの葉も
つややかに茂っている。
駐車場に放置していたプランターには
いつのまにか黄色い花が咲き乱れ
日ごと丈をのばしている。
氏神さんにお参りをして見上げれば
大木の葉もすっかり密になり、空を覆っていた。
夕方の陽ものびて、仕事を終えれば
明るいうちからの一杯ができるのもうれしい。
二階の台所から、
ビールを飲みながら神社の緑を眺めれば、
好い季節になったなあと、
おだやかに、ぜいたくな気分になれるのだった。
ただ、ひとついけないことがあった。
毎年この時期になると、玄関先のつるバラが
つぼみをつけていた。
翌月になるとちいさな白い花が咲くのに
今年は枯れ枝のままだった。通りがかりの
自転車屋のおさむさんがしげしげ眺め、
こりゃ、もうだめだなあというものだから、
たしかにろくな手入れもしていなかったと
かわいそうなことをした。
そのバラの根元から、
ぐんぐんのびているあたらしい枝がある。
丸みのある葉をつけて、
緑の粒々があちこちにかたまっている。
なんだろうと思い、写真を撮って
メールで花屋の友だちに尋ねてみたら、
ガマズミといいます。もうじき白い花が咲きます。
みやいりさんも人生の花を咲かせてくださいと
返事がきた。
お気遣いありがとう。
残念ながら、すでにバラのように
枯れ果てていますと返しそうになった。





  


陸上競技場で

2013年05月16日

 へこりと at 14:15  | Comments(0)
皐月 八

足を痛めた。
ときどきのランニングで足に疲れがたまってくると、
きまって左のひざと右の足首が痛くなる。
整骨院を営む友だちに診てもらったら、
足首、熱があるねといわれ、
冷やしてテーピングをしてもらった。
ひざは、生まれたときからのちいさなひびがあると
お医者にいわれたことがある。
足首は、高校生のときの体育の授業のサッカーで
ひねってじん帯を伸ばし、
ひと月ギプスの世話になったから、
それがくせになっていると見当がつく。
ずいぶん昔の古傷に、
いつまでも悩まされるとしょんぼりして
アイスノンで冷やしていた。
しばらくはやわらかいところを走っていようと
思い立ち、痛みのおさまりかけた朝、
ロードバイクにまたがって
東和田の運動公園へ出かけた。
陸上競技場のサブトラックに行けば、
早朝から、ラジオ体操をしたり歩き回ったり
気合入れて走ったりと、
年配のかたがたの姿がある。
おはようございますとあいさつを交わしながら
ゆっくりと芝生の上を走り出す。
高校生のとき陸上部に入っていた。
毎日この競技場に通ってきては
長い距離を走っていた。
ひさしぶりの芝生の匂いに触れれば、
たいした記録はのこせなかったものの、
健気に汗を流していたあの頃がなつかしい。
将来になんの不安も抱えていなかった頃で、
まさか、こんなふとどきな人生をおくるようになるとは
露ほどにも思ってみなかった。
仕事のあとのランニングも、
汗を流して旨いビールを飲むためと、
不純な動機もすっかり当たり前ごとに
なっているのだった。




  


スター商会さんへ

2013年05月15日

 へこりと at 10:44  | Comments(0)
皐月 七

朝夕ときどきランニングをしている。
履いていたシューズがすり減ってきたから
買い換えることにした。
このところ、インターネットのスポーツ屋か
チェーン店のおおきなスポーツ屋で
手ごろな価格のを見つけては買っていた。
ひとくちにランニングシューズといっても、
あちこちのメーカーからいろんな種類が出ていて
そのたびに迷う。
おまけにおなじメーカーのおなじサイズでも
種類によって履き心地がちがうから、
届いて履いて走ってみたら、
いまひとつということもありいけない。
中学生の後半と高校生のとき陸上をやっていた。
あのころはメーカーといえば
おもにアシックスとアディダスくらいで、
ナイキがやっと出始めたときだった。
ランニングシューズにいたっては
アシックスばかりで、
種類もすくなかったから、買い物もすんなり済んだ。
このたびは、きちんとアドバイスを受けて
足に合うのを選びたい。
それならば店員さんとの距離がちかい
むかしながらのちいさな店が好いと、
スター商会さんへと行ったのだった。
善光寺の門前ちかくのこの店は、
家からも学校からもほどちかく、
学生のときにいちばん足を運んでいた。
元気のいいおばさんがいて、買い物をすると
いつもソックスひとつサービスしてくれた。
ときどき、太った体をゆらして歩いているのを
かわらずお元気でと,近所で見かけることがある。
店に入って眺めれば、
アシックスとミズノにちからを入れている。
当たりの好いわかいお兄さんが、
それぞれのメーカーのちがいをこと細かに
説明してくれて、
その人その人の走るくせによっても
選び方があるとおしえてくれる。
ためし履きをして歩いてみたら、
それまでほとんどアシックスばかりの身には、
こんなにちがいがあるのですかと勉強になり、
考えて、はじめてのミズノに落着したのだった。
レジへお会計へと行けば、見覚えのあるおばさんが
ありがとうございますと変わらぬ大きな声で
あいさつしてくれてなつかしい。
久しぶりの店で居心地の好い時間をすごせたから、
こんど買い換えるときも伺うと早々にきめた。
値札から六百円まけてくれたうえ、
ソックスひとつに峰福堂のあんバタどら焼き二個
いただいて、
ずいぶんご無沙汰の客なのにと恐縮した。




  


空き家を活かして

2013年05月14日

 へこりと at 14:03  | Comments(2)
皐月 六

善光寺のまわりも、すっかり緑の季節になった。
朝の陽気もおだやかになり、
お参りがてら、新緑の輝きをながめながら歩けば
気分もさっぱりすがすがしい。
住んでいる東之門町にあたらしい店が出来た。
年季の入った空き家を直して、
鯛焼きならぬ鯉焼きという菓子を売っている。
ホームページを拝見したら、
店を営む御主人は茶道の心得があり、
ふぐの調理の資格も持っている。
おまけに、日本酒の利き酒師の資格も
あるというから見のがせない。
先日ひとつ買いに出かけたときに
その旨尋ねたら、
日本酒が好きなものでと返事がきた。
おなじ町内になったよしみ、
折を見て一献酌み交わしたいと、
甘味処の店内で、朝から辛味の話となった。
ここ最近、善光寺のまわりや静かな住宅街の
空き家を利用して、
店を始める人がふえている。
床屋のあった桜枝町のよつかどの建物は
台湾茶の店になった。
そこから東へ二百メートル、
郵便局のむかいの美容室の空き店舗は
雑貨屋さんができるという。
ながらく空いたままだった焼き肉屋の店は
やはり雑貨屋さんになり、
すっかり景色になじんできた。
春のはじめにオープンしたケーキ屋は
ビールとワインがメニューにある。
休日の晩酌まえの間が空いたとき、
キッシュやチーズケーキでかるく一杯できるのは
なんとも気のきいたことだった。
横町の、呉服屋の空き店舗も喫茶店になるといい、
このごろ工事の人の姿が見えはじめた。
先日、西町のスター商会で買い物をした帰り、
通りを上がって行ったら、
ながらく空いていた成金まんじゅうの店を
男と女のかたがかたづけていて、
ここもまた店をはじめるのかと興味ぶかくながめた。
安くて旨い今川焼きのような成金まんじゅうは、
育ちざかりの小腹を満たすのにちょうど好く、
学生たちのたまり場になっていた。
夏にはかき氷も登場して、
店先のアイスボックスにはコーラやラムネが
冷えていた。
学校時代の友だちと酌み交わし、
昔の話にながれれば、
成金まんじゅうなつかしいねと、いまでも話しに出る。
あれだけさんざん食べたのに、
いまだ成金になれないでいる。


  


酒器愛でて

2013年05月09日

 へこりと at 14:34  | Comments(0)
皐月 五

散歩をしていたら、
古民家のギャラリーの窓越しに
朝比奈克文さんの器がならんでいた。
このかたの、子供用のちいさな飯茶碗を
買ったことがある。
盃がわりに酒を注いだり、小鉢のかわりに
豆やつけ物を盛って使っている。
酒をたしなむようになってから、
ときどき酒器をもとめている。
いちばん買うのは、黒姫山のふもとに暮らす
山中恵介さんの作品で、
毎年夏のはじめに本屋のギャラリーでひらく
作品展に出向いては、一個買わせてもらう。
簡素な白地に青の絵柄のそば猪口や盃は、
つくられるかたのおだやかな柄が現れている。
すっかりほまれ高き酔っ払いと知られているから、
ときどき頂きものをする。
北海道へ旅行に出かけた友だちは、
富良野のガラス工房の盃を土産にくれた。
とおく北の大地から、
ヨッパの姿を思い出してくれるのは
ありがたいことだった。
飲み仲間のかたから薄はりのグラスを
頂いたこともある。
繊細な口あたりに杯をかさねすぎたときは
酔って洗って割らぬよう、
気をつけなくてはいけない。
長いあいだ生き別れになっていた娘には
片口と盃のセットを頂いた。
わかれたときはまだ二歳。
父の記憶もないはずなのに
酒器の贈りものと気がきいたのは、
わかれた連れ合いから、
それはそれはあなたのおとうさんは
ひどい酒飲みだったと
さんざん聞かされていたおかげと
容易に見当がついた。
ずいぶんふかい縁のかたに
ウイスキー用にと頂いたアンティークの
ショットグラスは、
日本酒を酌むのにもちょうど好く
たびたび使っている。
この誕生日には桜の柄のガラスの
盃も頂いて、
山桜の里で、一ノ蔵の純米を酌み交わした。
毎年五月の連休に、
岐阜の陶器市に出かける友だちがいる。
そのたびひとつ土産に買ってきてくれて、
今年はすこし大ぶりの黒いぐい飲みを
買ってきてくれた。
手になじむ持ち心地が好く、
さっそく真澄の純米吟醸を酌んだ。
新緑になごみながら、好みの器でほとほと酔う。
そんな季節になっているのだった。





  


おそ目の祝いに

2013年05月07日

 へこりと at 13:15  | Comments(0)
皐月 四

湯田中へでかけた。
馴染みのおでん屋さんの別宅へ、
若旦那と、常連さん四人と遊びに出かけたのだった。
連休のなか日、道も混んでいるからあわてずに。
のんびりと原付バイクを走らせた。
前回訪ねたのは、昨年の六月のことだった。
先代の女将さんがお元気だったときで、
ひととき宴の空気がおちついたときに、
抱えている病が思いのほかすすんでいることを
知らされたのだった。
中野市から温泉街、慣れた道を上っていけば、
寒沢地区のあちこちにうす紅色の桜が見られ、
遅い春の気配をただよわせていた。
走って冷えこんだ体を、
穂波温泉の熱い湯であたためて乾杯をすれば、
はるか北信五岳の山並みに
今日の陽もおちてゆく。
鍋を囲んで焼酎に日本酒にワイン、
つぎつぎと瓶を空にして、宴も半ばをすぎたころ、
おめでとうのケーキが出てきて
おそ目の誕生祝いをしてもらったのは
予期せぬうれしいことだった。
次の日、飲み疲れの体を癒しに朝風呂へと出かけ、
ふたたびの熱い湯に目も覚める。
朝の景色に目をやれば、
八重桜の花のむこうに、
雪をかぶった北信五岳が好く見えて、今日も晴れる。
家のうらの畑では、若旦那が野菜の種をまくという。
畑のわきには、生前女将さんの好きだった、
はなみずきの苗木が植えられていた。
山から下りてきたら、そのままひさしぶりのかたと、
近況報告かたらいながら昼のビールとなる。
夕方からは、馴染みの友だち夫婦も加わって、
前菜とパスタをつまみながらワインを空けた。
この日も、それぞれおめでとうの気持ちをいただいて、
気のおけないかたがたの心くばりに感謝をした。
この歳をどう往きたいかと問われれば、
おおきな欲も志しもない。
ゆっくりとこのままで。
せめて今ある縁を粗末にせず。
そこだけ言いきかせたいのだった。







  


めでたい知らせに

2013年05月04日

 へこりと at 09:35  | Comments(4)
皐月 三

四月の末にひとつ歳をかさねた。
たくさんのかたからお祝いのメッセージを
いただいて、
近しいかたから日本酒にワイン、
元気の素をいただいてうれしい。
飲み仲間の蕎麦屋の若旦那からは、
ミッキーマウスの柄のエプロンをいただいた。
またかわいいものをと広げてみたら、
エプロンにしては幅がせまい。
よくよく見たらふんどしだった。
ためしに身に着けてみたら、
なかなか具合が好く
いいもんですなあと惹かれた。
誕生日の夜、
もうひとつうれしい贈りものがあった。
鶴賀のさびれた飲み屋町に、
行きつけのおでん屋がある。
気さくな女将さんの営んでいた店で、
店を始めたころからずっと通っていた。
女将さんがおおきな病気をして
彼岸へ逝ってしまってから、
手伝いに来ていた息子さんがそのまま商いを
つづけていた。
もともと旅をするのが好きな柄で、
店を手伝う前は、
国内国外あちこち移り暮らしていて、
引き継いで四ヶ月、別の暮らしをするといい、
五月いっぱいの店じまいを聞かされていた。
ながい間の酔っ払い人生、
店じまいに向き合ったことも、
一度や二度のことではない。
ときには思うところあって、開いていても、
みずから遠のいた店もある。
それでもこのおでん屋のおしまいに
感慨ぶかくなってしまうのは、
女将さんや知り合ったかたがたに、
店と客のわくをこえた、
染み入った縁をつくっていただいたからだった。
みんなにも会えなくなるかなと
しょんぼりな気分でいたら、
すみません、やっぱりまだつづけますと
知らせが届いたのだった。
いざ閉めるとなったら、
常連のみなさんと別れるのもさみしい。
ほんとにやり切ったかと自分に問えば、
まだ足りない気持ちにもなって、
思いなおして、もういちどつづけることにしたという。
すっかりあきらめていたから、好いほうへ
転がりかわったのは、なによりのことだった。
この夏はおでん屋のカウンターでゆうゆうと
ふんどし一丁でビールを飲まなくてはいけない。





  


五月になって

2013年05月03日

 へこりと at 08:20  | Comments(0)
皐月 二

五月になった。
氏神さんの境内でラジオ体操をしながら見上げれば、
たかだか木々の茂みが晴天に映えている。
朝からのつよい風に雲がすっきりはらわれて、
菅平の山並みにも緑の気配が増してきた。
連休週間になり、
善光寺にもはやばやの参拝客が多い。
朝は門前界隈のご近所を、
陽が暮れれば飲み屋界隈をふらふら歩くのが
すっかり日課になっている。
一日のうちに健全な時間と不健全な時間を
バランスよくとっている。
この頃、セブンイレブンで朝カフェがはじまって、
挽きたて淹れたてのコーヒーを飲めるようになった。
ひとまわり散歩のあとに善光寺下の店に寄り、
レジのすみで一杯いただく。
ちいさいサイズで百円で、おおきい方は百五十円。
手ごろな値段でもしっかりと味に深みと苦味があり、
コーヒー好きの身にも文句はない。
笑顔を絶やさない店長さんと
きびきび働くスタッフのさわやかさが、
コーヒーの味をより美味しくしてくれるのも
まことにまことに好いことだった。
朝早くから、いろんなかたが買い物にと入ってくる。
いそぎ足でおにぎり三個買っていった外人の女性は、
この間、下駄はないかと尋ねてきたといい、
いくらコンビニでも、さすがに下駄は売ってない。
焼酎のワンカップと、
天ぷら一品買っていったおじいさんは、
これから一杯やるとわかり、いずれはああなると
他人を見ている気がしない。
寝間着の上からジャンパーを引っかけて来た
きれいなお姉さんもいて、朝からなかなか色っぽい。
コーヒーでひと息ついて坂道を上がっていけば、
いまだ肌さむい空気にも、
五月のすがすがしさがうかがえた。
近所のカフェにビールを飲みに出かけたら、
奥さんが、顔におおきな湿布を貼っていて、
目もとが赤く腫れていた。
まちこさん、どおしたのおとおどろいて聞けば、
酔っぱらって転んだというから、
我が同胞とだきしめたくなった。
新緑の季節を痛い思いでむかえるのも
気の毒なことだった。


  


日本酒とワインと相性と

2013年05月01日

 へこりと at 07:42  | Comments(0)
皐月 一

日本酒をいただいた。
茨城の来福に篠ノ井の積善。
地元の積善の若い杜氏さんは、以前来福のお蔵さんで
修行をされていたことがある。
ともに花酵母と愛山という酒米で仕込まれたもので、
おなじ素材の味のちがいを飲み比べたのだった。
なじみのおでん屋に持ち込んで、
飲み友だちと利いてみれば、
来福はあたりがやわらかく、積善はややかたい。
どちらも、花酵母を使っていても香りがくどくないから
飲み飽きせずにすいすいといけた。
この日はワインにくわしい友だちに信州産を二本、
見つくろって持ってきてもらった。
東御市の蓮見さんに小布施町の曽我さん、
ともにピノ・ノワールで仕込まれた赤で、
東信と北信、おなじぶどうの土壌ちがいの味を
利いてみた。
蓮見さんはやさしくシンプルで、曽我さんは
より複雑な感がある。
信州でワインといえば、ながらく塩尻のイメージがあった。
ずいぶん以前、信濃ワインの醸造所を訪ねたことがあった。
いまほど身も心も酒に毒される前だったから
試飲をしても、旨いのかまずいのかもわからなかった。
このところ、東信北信にちいさなワイナリーが増えてきて楽しい。
造る数がかぎられているから、
扱う酒屋さんがすくないものの、
機会を見つけては、手に入れ酌んでみたい。
ピノ・ノワールは、じつはおでんにも好く合うと教えられ、
ワインとおでんが結びつかなかったから
意外な組み合わせとおどろいたのだった。
近所のピザ屋のご主人が、
このごろ日本酒にめざめたという。
近ぢかメニューに載せたいというから
ピザに合う日本酒、なにがいいかなあと飲み友だちに
聞いてみた。
チーズには、香りも旨みも濃い目が好いか。
埼玉の花浴陽に滋賀のモンスーン。
豊野の大信州に、小布施の豊賀も好いのではと
うなずける意見が出た。
和の食べ物に合うワインがあれば、洋の食べ物に合う
日本酒もあって、
あれこれ相性さぐるのも、酒好きには楽しいことだった。