芦屋の友だちから
水無月 3
毎年、そこかしこで地震が起こっている。
群馬が揺れた次の日、大阪が大きく揺れたのだった。
朝の通勤通学の時間のときで、
テレビで、交通がマヒして、
途方に暮れる人たちを映していた。
周辺の震度が映される中、
兵庫の芦屋が気になりだす。
友だちが暮らしているのだった。
10年ほど前、旅行で長野に来たときに知り合った。
それ以来、長野へ来た折りは、
連絡をしてきてくれる。
酒をたしなむと聞いて、
長野の日本酒を送ったことがある。
それがきっかけで、それぞれ気に入りの品を、
やり取りするようにもなった。
そういえば、元気にしてるかなあ。
ふと思い出したりするときに、
きまって、品ものが届くのだった。
午後、芦屋市のホームページを開いてみれば、
震度4、目立った被害はないという。
ほっとしていたら、
自宅の前にクロネコさんのトラックが止まった。
当の本人から荷物が届いたのだった。
開いてみたら、鰹節と料理酒と梅酒が入っていた。
添えられた手紙には、
鰹節は、
昔ながらの手間ひまかけて作られたものといい、
ひと口食べてみたら、
やさしく柔らかい風味がとても好い。
料理酒は、ふだん使っている、
喜多方のお蔵さんのもので、
自家製の梅酒は、
沖縄の黒糖焼酎で仕込んだものという。
今回も、気の利いた品々をありがたい。
仕事が終わる頃電話をしたら、
ぜんぜん被害ないですよ。
のんびりした声が返ってきた。
気遣いのお礼を言って、
夜、鰹節をつまみにちびちびと酒を酌んだ。
手紙には、前にいただいたみすゞ飴、
とてもおいしく毎日味わうのが
たのしみでしたと有った。
夏の盛り、みすゞ飴といっしょになにを送ろうか。
考えるのも楽しみなことだった。

毎年、そこかしこで地震が起こっている。
群馬が揺れた次の日、大阪が大きく揺れたのだった。
朝の通勤通学の時間のときで、
テレビで、交通がマヒして、
途方に暮れる人たちを映していた。
周辺の震度が映される中、
兵庫の芦屋が気になりだす。
友だちが暮らしているのだった。
10年ほど前、旅行で長野に来たときに知り合った。
それ以来、長野へ来た折りは、
連絡をしてきてくれる。
酒をたしなむと聞いて、
長野の日本酒を送ったことがある。
それがきっかけで、それぞれ気に入りの品を、
やり取りするようにもなった。
そういえば、元気にしてるかなあ。
ふと思い出したりするときに、
きまって、品ものが届くのだった。
午後、芦屋市のホームページを開いてみれば、
震度4、目立った被害はないという。
ほっとしていたら、
自宅の前にクロネコさんのトラックが止まった。
当の本人から荷物が届いたのだった。
開いてみたら、鰹節と料理酒と梅酒が入っていた。
添えられた手紙には、
鰹節は、
昔ながらの手間ひまかけて作られたものといい、
ひと口食べてみたら、
やさしく柔らかい風味がとても好い。
料理酒は、ふだん使っている、
喜多方のお蔵さんのもので、
自家製の梅酒は、
沖縄の黒糖焼酎で仕込んだものという。
今回も、気の利いた品々をありがたい。
仕事が終わる頃電話をしたら、
ぜんぜん被害ないですよ。
のんびりした声が返ってきた。
気遣いのお礼を言って、
夜、鰹節をつまみにちびちびと酒を酌んだ。
手紙には、前にいただいたみすゞ飴、
とてもおいしく毎日味わうのが
たのしみでしたと有った。
夏の盛り、みすゞ飴といっしょになにを送ろうか。
考えるのも楽しみなことだった。
東京散歩
水無月 2
朝、東京へ散歩に出かけた。
上野駅で降りて、雨上がりの曇天の空の下を歩いていく。
調理道具の店が軒を連ねる合羽橋を抜けていくと、
ぽつぽつと、開店の支度をしているところだった。
浅草演芸ホールをすぎて、浅草寺に行くと、
朝から観光客でごった返している。
ピーチクパーチク、アジアの言葉が飛び交う中、
お参りをした。
雷門を出て、上野公園に行くと、
観光客と、修学旅行の子供たちで賑わっている。
ふだん、ひと気のない静かな町で暮らしている。
久しぶりの都会の煩雑さは、
妙に新鮮に感じられるのだった。
不忍池を渡って、広い通りを歩いていくと、
根津神社が在った。小路を入った先に、
どーんとでっかい鳥居が見えて、抜けていくと、
もうひとつりっぱな赤い門が在った。
ここも観光客でにぎわっていて、
境内では、幼稚園のちびっ子たちが、
元気に走り回っていた。
拝殿でお参りをして、
団子坂下の信号を渡って歩いていくと、
谷中銀座にたどり着く。
肉屋のコロッケに、
酒屋の生ビールをがまんして通りを抜ければ,
時刻もちょうど良い。
今日の昼は日暮里駅前の、
蕎麦屋の川むらさんと決めていた。
以前、春風亭一之輔さんと川上麻衣子さんが、
谷中を散策して、
この蕎麦屋で酌み交わす番組を観たことがあった。
ちらっと映った冷蔵庫の、
酒の品ぞろえが好かったのだった。
酒の銘柄も多く、つまみもなかなかそそられる。
板わさを突っつきながら、一番搾りを一本と、
宮城の阿部勘を一杯。
細打ちのもりで締めた。
店の愛想も好く、今度は夜、ゆっくり来てみたいものだった。
帰り道、谷中墓地の中を抜けていくと、
ここにも観光客の姿がある。
そこかしこに、背丈よりも高いりっぱな墓が目に入り、
偉い人の墓とわかる。
歴史の教科書に載っている人が眠っていると、
墓地も観光地に成るのだった。
感心をして、広い墓地を出て、
ふたたび上野公園に向かったのだった。

朝、東京へ散歩に出かけた。
上野駅で降りて、雨上がりの曇天の空の下を歩いていく。
調理道具の店が軒を連ねる合羽橋を抜けていくと、
ぽつぽつと、開店の支度をしているところだった。
浅草演芸ホールをすぎて、浅草寺に行くと、
朝から観光客でごった返している。
ピーチクパーチク、アジアの言葉が飛び交う中、
お参りをした。
雷門を出て、上野公園に行くと、
観光客と、修学旅行の子供たちで賑わっている。
ふだん、ひと気のない静かな町で暮らしている。
久しぶりの都会の煩雑さは、
妙に新鮮に感じられるのだった。
不忍池を渡って、広い通りを歩いていくと、
根津神社が在った。小路を入った先に、
どーんとでっかい鳥居が見えて、抜けていくと、
もうひとつりっぱな赤い門が在った。
ここも観光客でにぎわっていて、
境内では、幼稚園のちびっ子たちが、
元気に走り回っていた。
拝殿でお参りをして、
団子坂下の信号を渡って歩いていくと、
谷中銀座にたどり着く。
肉屋のコロッケに、
酒屋の生ビールをがまんして通りを抜ければ,
時刻もちょうど良い。
今日の昼は日暮里駅前の、
蕎麦屋の川むらさんと決めていた。
以前、春風亭一之輔さんと川上麻衣子さんが、
谷中を散策して、
この蕎麦屋で酌み交わす番組を観たことがあった。
ちらっと映った冷蔵庫の、
酒の品ぞろえが好かったのだった。
酒の銘柄も多く、つまみもなかなかそそられる。
板わさを突っつきながら、一番搾りを一本と、
宮城の阿部勘を一杯。
細打ちのもりで締めた。
店の愛想も好く、今度は夜、ゆっくり来てみたいものだった。
帰り道、谷中墓地の中を抜けていくと、
ここにも観光客の姿がある。
そこかしこに、背丈よりも高いりっぱな墓が目に入り、
偉い人の墓とわかる。
歴史の教科書に載っている人が眠っていると、
墓地も観光地に成るのだった。
感心をして、広い墓地を出て、
ふたたび上野公園に向かったのだった。
日ごとの緑に
水無月 1
酔っぱらって帰って、そのまま茶の間でつぶれた翌朝、
風邪を引いた。
さいわい熱は出ないものの、喉が痛くて咳が出て、
鼻水が垂れてくる。
このところ天気の様子が不安定で、
真夏のような日もあれば、寒戻りのような日もある。
前夜もずいぶん寒かったのか、
酩酊していて覚えていない。
不摂生な身は、
気温の変化についていけないのだった。
夜通し冷たい雨が降った朝、
外に出たら、
ひととき目を楽しませてくれた、玄関先のがまずみと、
駐車場のツルバラが散っていた。
濡れた地面に、
無数の花びらが張り付いているのだった。
代わって、陽の当たらない場所のどくだみの群れが、
白い花を咲かせはじめた。
玄関横の壁ぎわでは、
零余子の葉があれよあれよと茂りだし、
すき間なく埋めつくされた。
善光寺門前や里山の緑も、目に鮮やかに色濃くなって、
風邪をひいても二日酔いでも、爽やかな気配に
気持ちが洗われるのだった。
今朝散歩に出たら、教授院の駐車場の紫陽花が、
もうすぐ色づきそうだった。
善光寺西側の紫陽花を確かめに行ったら、
こちらはもうちょい先だった。
梅雨の季節、空気が湿り気を帯びれば、
里も山も柔らかな気配に包まれる。遠く近く、
梅雨どきの散歩も、また楽しいことだった。
昨日の昼下がり、
遠くの町で、酒屋を営む友だちから電話が来た。
話しをしながらゴホンと咳き込んだら、
風邪ですかあ、大丈夫ですかあと心配される。
大丈夫、毎晩アルコール消毒してるからと答えたら、
今日の午前も早々に、、高価なアルコール消毒液を
送ってきてくれた。
瓶を眺めているだけで風邪も治りそうだわ。
心遣いがありがたいことだった。

酔っぱらって帰って、そのまま茶の間でつぶれた翌朝、
風邪を引いた。
さいわい熱は出ないものの、喉が痛くて咳が出て、
鼻水が垂れてくる。
このところ天気の様子が不安定で、
真夏のような日もあれば、寒戻りのような日もある。
前夜もずいぶん寒かったのか、
酩酊していて覚えていない。
不摂生な身は、
気温の変化についていけないのだった。
夜通し冷たい雨が降った朝、
外に出たら、
ひととき目を楽しませてくれた、玄関先のがまずみと、
駐車場のツルバラが散っていた。
濡れた地面に、
無数の花びらが張り付いているのだった。
代わって、陽の当たらない場所のどくだみの群れが、
白い花を咲かせはじめた。
玄関横の壁ぎわでは、
零余子の葉があれよあれよと茂りだし、
すき間なく埋めつくされた。
善光寺門前や里山の緑も、目に鮮やかに色濃くなって、
風邪をひいても二日酔いでも、爽やかな気配に
気持ちが洗われるのだった。
今朝散歩に出たら、教授院の駐車場の紫陽花が、
もうすぐ色づきそうだった。
善光寺西側の紫陽花を確かめに行ったら、
こちらはもうちょい先だった。
梅雨の季節、空気が湿り気を帯びれば、
里も山も柔らかな気配に包まれる。遠く近く、
梅雨どきの散歩も、また楽しいことだった。
昨日の昼下がり、
遠くの町で、酒屋を営む友だちから電話が来た。
話しをしながらゴホンと咳き込んだら、
風邪ですかあ、大丈夫ですかあと心配される。
大丈夫、毎晩アルコール消毒してるからと答えたら、
今日の午前も早々に、、高価なアルコール消毒液を
送ってきてくれた。
瓶を眺めているだけで風邪も治りそうだわ。
心遣いがありがたいことだった。