酒粕賛々。
2025年02月25日
へこりと at 11:06 | Comments(1)
如月 6
酒屋を営む友だちに酒粕を頂いた。
長野市は信州新町のお蔵さん、尾澤酒造場の銘酒、
十九の酒粕だった。もう旨いに決まっている。昔はどこの家庭でも
酒粕を漬物作りに使っていたと聞く。最近は粕漬けを作る人も
いなくなり、酒粕が余っていると、以前知り合いのお蔵さんに
聞いたことがある。
旨い酒粕は、そのまま炙って酒のつまみにしても好いし、寒い冬は
何と言っても鍋でしょうと、毎晩の鍋に溶かしている。
あれこれ具材をごちゃごちゃ入れるのは好きではないので、
大根の千切りと油揚げ、湯豆腐、白菜と油揚げ、豆腐と油揚げ、
豆腐とネギ、豆腐か油揚げに野菜を一品加えただけの簡単な鍋を
仕込んで、突っつきながら杯を重ねている。小ぶりの鍋に出汁と
味噌と具材を入れて、頂いた酒粕をちょいと多めに落とせば、
いつもの鍋より体が温まるのだった。ときどき豆乳を買ってきて、
鍋に使うときがある。酒粕が残っているうちに、久しぶりの
豆乳鍋を仕込みたいことだった。
かつて両親は、寒くなってくると酒粕を買ってきて、朝飯と夕飯の
味噌汁に入れていた。以前酒屋の友だちからもらった酒粕を、
半分おすそ分けしたことがある。
翌日母から電話がかかって来た。あんた、あの酒粕どこで手に入れ
たんだね。ふだんスーパーで買っている酒粕と全然違う。
味噌汁が格段に美味しくなったというのだった。
そりゃそうでしょ。宮城の新澤醸造の銘酒、愛宕の松の酒粕だもの。
えらい喜びようだったから、自宅にあった残りの半分も
届けてあげた。以来、酒粕をもらうたびに両親に届けるようになった。
味噌汁に入れる量なんてたかが知れている。寒さが緩んで
春の盛りを迎える頃まで味噌汁に使っていた。母が大病をしてから、
たびたび父が食事の支度をするようになった。いちど朝飯のときに、
味噌汁に酒粕を入れすぎちゃって、下戸だった母が酔ってしまったことが
あったっけ。
酒粕ひとつにも、ささやかな両親との思い出があり、気持ちも温まる
ことだった。
粕汁や父母思い出す熱さかな。
この記事へのコメント
いい酒をつくる酒屋、
酒だけでなく、
酒粕もあなどれないのですね。
お母さんの反応、
面白いエピソードですね。
酒だけでなく、
酒粕もあなどれないのですね。
お母さんの反応、
面白いエピソードですね。
Posted by 上穂悠生
at 2025年02月25日 20:23
