御湖鶴に
卯月 7
毎日酔っぱらってばかりいる。
二日酔いで寝過ごした朝、
馴染みの飲み屋の旦那から、メールが来ていた。
御湖鶴、自己破産だそうですねとあって、
えっ、マジ?と、しばらくぽかんとしてしまった。
下諏訪の地酒、御湖鶴は、
いまや長野を代表する銘柄だった。
朝刊を開いたら、下諏訪の菱友醸造、事業停止と載っていて、
負債は2億4千万とのことだった。
長らく休業していた酒蔵を、
今の社長の近藤さんが引き継いだのは、
15年ほど前のことだった。
酒屋を営む友だちが取り引きをすることになり、
引き合わせてもらったのだった。
造りを始めた最初のころはパッとしなかったのに、
年を追うごとにどんどん味が良くなって、
県外の大手の酒屋に認められたリ、全国誌で紹介されたり、
サッカーのワールドカップの認定酒に選ばれたり、
ぐいぐいと、名が馳せていった。
順調に売り上げを伸ばしていると見ていたから、
ほんとうに驚いたのだった。
知らせを聞いた飲み仲間からもメールが来て、
みんな驚きをかくせない。
お蔵さんがつぶれた話は、これまで何度か耳にした。
このたびは、無名のころから縁のあったお蔵さんだから、
親しみもある。
ことさら寂しく感じてしまうのだった。
お蔵さんの中には自立の経営がむずかしく、
資本のある会社の傘下で、造りをしているところもある。
どこか、手を差し伸べてくれるかたが現れないものか。
酒蔵には、2度ほど訪ねたことがあった。
蔵人も若いかたがおおく、皆さん赤い手ぬぐいを頭に巻いて、
きびきびと仕込みをしていた。
御湖鶴という美しい名の銘柄が、
ふたたび日の目を見ますよう、願っているのだった。

毎日酔っぱらってばかりいる。
二日酔いで寝過ごした朝、
馴染みの飲み屋の旦那から、メールが来ていた。
御湖鶴、自己破産だそうですねとあって、
えっ、マジ?と、しばらくぽかんとしてしまった。
下諏訪の地酒、御湖鶴は、
いまや長野を代表する銘柄だった。
朝刊を開いたら、下諏訪の菱友醸造、事業停止と載っていて、
負債は2億4千万とのことだった。
長らく休業していた酒蔵を、
今の社長の近藤さんが引き継いだのは、
15年ほど前のことだった。
酒屋を営む友だちが取り引きをすることになり、
引き合わせてもらったのだった。
造りを始めた最初のころはパッとしなかったのに、
年を追うごとにどんどん味が良くなって、
県外の大手の酒屋に認められたリ、全国誌で紹介されたり、
サッカーのワールドカップの認定酒に選ばれたり、
ぐいぐいと、名が馳せていった。
順調に売り上げを伸ばしていると見ていたから、
ほんとうに驚いたのだった。
知らせを聞いた飲み仲間からもメールが来て、
みんな驚きをかくせない。
お蔵さんがつぶれた話は、これまで何度か耳にした。
このたびは、無名のころから縁のあったお蔵さんだから、
親しみもある。
ことさら寂しく感じてしまうのだった。
お蔵さんの中には自立の経営がむずかしく、
資本のある会社の傘下で、造りをしているところもある。
どこか、手を差し伸べてくれるかたが現れないものか。
酒蔵には、2度ほど訪ねたことがあった。
蔵人も若いかたがおおく、皆さん赤い手ぬぐいを頭に巻いて、
きびきびと仕込みをしていた。
御湖鶴という美しい名の銘柄が、
ふたたび日の目を見ますよう、願っているのだった。

新緑の時に
卯月 6
氏神さんの桜が、すっかり葉桜に成った。
境内の木々も、見上げるほどにさわやかに葉が茂り、
新緑の季節を迎えているのだった。
玄関先のガマズミも日ごと葉がおおきくなり、
蕾が出てきた。
向かいの松木さんちのつたの枝も、
つやつやとした葉が増えている。
うらの駐車場のばらもみっしり葉が茂り、
この季節、目の前の植物の、
健気な力に感心をしている。
休日のおそい午後、城山公園の信濃美術館へ出かけた。
花ひらくフランス風景画展をやっているのだった。
桜の花びらで埋まった、
城山小学校のプールを見下ろしながら行けば、
公園も新緑で輝いて、
子供たちのにぎやかな声が聞こえてきた。
ひさしぶりに、コローやターナーの作品を眺め、
館内のカフェでビールでもと思ったら、
店じまいの最中であきらめた。
隣接する東山魁夷館では、
魁夷さんの、代表的な作品が並べられている。
信濃美術館は、子供のときからもうどれだけ足を運んだか。
建てられて51年。東山魁夷館は27年。
両美術館ともこのたび改修することになったのだった。
城山公園も新しくされるといい、
善光寺も含めて、まとまりのある景観にするという。
大きな花時計にいきおいよく噴き出す噴水に、
子供のころから見慣れた場所が変わるのは、
すこしさみしい。
それでも、デパートがなくなったり、おおきな通りができたり、
駅舎がりっぱになったり、街の様子が変わるさまは
子供のときから目にしてきた。
過ぎてしまえば、あたらしい景色にもじきに馴染む。
城山公園のとなりの野球場の跡地は、
桜の木で囲まれた芝生の公園になって、
この春は花見客でにぎわったり、日ごろちいさい子供たちが、
お父さんやお母さんと遊びに来て、憩いの場になっている。
50余年行き来した場所の変わり具合が、
今から気になっているこの頃だった。

氏神さんの桜が、すっかり葉桜に成った。
境内の木々も、見上げるほどにさわやかに葉が茂り、
新緑の季節を迎えているのだった。
玄関先のガマズミも日ごと葉がおおきくなり、
蕾が出てきた。
向かいの松木さんちのつたの枝も、
つやつやとした葉が増えている。
うらの駐車場のばらもみっしり葉が茂り、
この季節、目の前の植物の、
健気な力に感心をしている。
休日のおそい午後、城山公園の信濃美術館へ出かけた。
花ひらくフランス風景画展をやっているのだった。
桜の花びらで埋まった、
城山小学校のプールを見下ろしながら行けば、
公園も新緑で輝いて、
子供たちのにぎやかな声が聞こえてきた。
ひさしぶりに、コローやターナーの作品を眺め、
館内のカフェでビールでもと思ったら、
店じまいの最中であきらめた。
隣接する東山魁夷館では、
魁夷さんの、代表的な作品が並べられている。
信濃美術館は、子供のときからもうどれだけ足を運んだか。
建てられて51年。東山魁夷館は27年。
両美術館ともこのたび改修することになったのだった。
城山公園も新しくされるといい、
善光寺も含めて、まとまりのある景観にするという。
大きな花時計にいきおいよく噴き出す噴水に、
子供のころから見慣れた場所が変わるのは、
すこしさみしい。
それでも、デパートがなくなったり、おおきな通りができたり、
駅舎がりっぱになったり、街の様子が変わるさまは
子供のときから目にしてきた。
過ぎてしまえば、あたらしい景色にもじきに馴染む。
城山公園のとなりの野球場の跡地は、
桜の木で囲まれた芝生の公園になって、
この春は花見客でにぎわったり、日ごろちいさい子供たちが、
お父さんやお母さんと遊びに来て、憩いの場になっている。
50余年行き来した場所の変わり具合が、
今から気になっているこの頃だった。
臥竜公園へ
卯月 5
ときどき、すこし遠出の散歩をしている。
あちこち初めてのところに行くよりも、
繰りかえし、気に入りの町へ行くのが好きな性分らしい。
毎年同じところばかり行っているのだった。
須坂観光協会のホームページを覗いたら、
臥竜公園の桜が満開とある。
マジか・・・
開花したと思ったら、先週の連日の暑さのせいで、
今年はどこも開花から満開までの間がない。
めずらしく仕事がいそがしい日で、
明日の分も稼いだから。
言い訳をして、夕方早々終いにして電車に飛び乗った。
駅を出て通りを上がっていくと、須坂高校の桜も満開だった。
赤いジャージの男の子たちが、目もくれないで走って行く。
小山小学校のグラウンドでは、桜の下で女の子たちが、
勢いよくブランコを漕いでいた。
通りすぎて公園に着くと、ちいさな子を連れた家族連れや、
学校帰りの学生たちで賑わっている。
池のまわりの桜たちはみごとに満開で、
場所によっては、すでに葉桜の枝もある。
夕方のつめたい風が、桜と池の水面を揺らしている。
燗酒で温まろうと思ったら、ずらりと並ぶ、
名物の、おでんの茶店はどこもいっぱいだった。
ひとしきり眺めて、ふたたび通りを下りていく。
駅前の、どこぞの飲み屋へ入ろうと思ったのに、
公園とはうらはらに、飲み屋の通りにまるで人の姿がない。
あまりの静けさに、
アウエーの店で飲む気分がしぼんでしまった。
そういえば、須坂の飲み屋で、ひとりで飲んだことがない。
馴染みを一件見つけると決めて、
ホームの長野へと、駅へ向かったのだった。

ときどき、すこし遠出の散歩をしている。
あちこち初めてのところに行くよりも、
繰りかえし、気に入りの町へ行くのが好きな性分らしい。
毎年同じところばかり行っているのだった。
須坂観光協会のホームページを覗いたら、
臥竜公園の桜が満開とある。
マジか・・・
開花したと思ったら、先週の連日の暑さのせいで、
今年はどこも開花から満開までの間がない。
めずらしく仕事がいそがしい日で、
明日の分も稼いだから。
言い訳をして、夕方早々終いにして電車に飛び乗った。
駅を出て通りを上がっていくと、須坂高校の桜も満開だった。
赤いジャージの男の子たちが、目もくれないで走って行く。
小山小学校のグラウンドでは、桜の下で女の子たちが、
勢いよくブランコを漕いでいた。
通りすぎて公園に着くと、ちいさな子を連れた家族連れや、
学校帰りの学生たちで賑わっている。
池のまわりの桜たちはみごとに満開で、
場所によっては、すでに葉桜の枝もある。
夕方のつめたい風が、桜と池の水面を揺らしている。
燗酒で温まろうと思ったら、ずらりと並ぶ、
名物の、おでんの茶店はどこもいっぱいだった。
ひとしきり眺めて、ふたたび通りを下りていく。
駅前の、どこぞの飲み屋へ入ろうと思ったのに、
公園とはうらはらに、飲み屋の通りにまるで人の姿がない。
あまりの静けさに、
アウエーの店で飲む気分がしぼんでしまった。
そういえば、須坂の飲み屋で、ひとりで飲んだことがない。
馴染みを一件見つけると決めて、
ホームの長野へと、駅へ向かったのだった。
桜満開
卯月 4
暑いくらいの日がつづき、善光寺境内や
城山公園の桜が、息つく間もなく見ごろになった。
週末とかさなって、
朝から夜まで、花見客で賑わっていたのだった。
休日の早朝、カメラをぶら下げて散歩に出た。
城山公園の桜並木を抜けて、
動物園わきの、桜並木の階段を下りて城山団地を抜ける。
広い通りを横切って長野高校の前まで来ると、
正門の桜並木も満開なのだった。
りっぱな並木は、卒業生の有志のみなさんが、
昭和50年に植樹したものという。
以来春になると、やさしく在校生を迎えているのだった。
見上げながら、
はて、我が母校に桜はあったかなと思い立つ。
そのまま、長野吉田高校まで歩いて行った。
通った覚えのある住宅街を抜けていくと、
広町の団地のそこかしこにも桜が咲いていた。
ひさしぶりの母校では、
正門の前に、色の濃いシダレザクラが一本揺れている。
校訓の、晴耕雨読の石碑を見ると、
こんな暮らしぶりでと、謝りたくなるのは毎度のことだった。
グラウンドに行ってみたら、向こうの金網越しに、
一本桜の木が在った。ぜんぜん記憶になかったなあ。
桜並木の壮観な眺めも良いが、
いさぎよく一本きりというのも良い。
きれいにならされたグラウンドは、
足を踏み入れるのが申しわけがない。
その場で目を凝らしていたら、丸刈り頭の生徒がやってきて、
ちわっす!とグラウンドに一礼して部室へ駆けていく。
朝から後輩のさわやかな姿を目にできて、
ちょいとうれしかった。
ひと休みにと、
近くのセブンイレブンでコーヒーを飲もうとしたら、
店員のおばちゃんが話しかけてきた。
桜を撮ってきたの?私の実家が中条村なんだけど、
これからは山桜もいいわよという。
そういえば山の桜は、じっくり近くで眺めたことがない。
足を延ばしてみようかなと、つい、そそられたのだった。

暑いくらいの日がつづき、善光寺境内や
城山公園の桜が、息つく間もなく見ごろになった。
週末とかさなって、
朝から夜まで、花見客で賑わっていたのだった。
休日の早朝、カメラをぶら下げて散歩に出た。
城山公園の桜並木を抜けて、
動物園わきの、桜並木の階段を下りて城山団地を抜ける。
広い通りを横切って長野高校の前まで来ると、
正門の桜並木も満開なのだった。
りっぱな並木は、卒業生の有志のみなさんが、
昭和50年に植樹したものという。
以来春になると、やさしく在校生を迎えているのだった。
見上げながら、
はて、我が母校に桜はあったかなと思い立つ。
そのまま、長野吉田高校まで歩いて行った。
通った覚えのある住宅街を抜けていくと、
広町の団地のそこかしこにも桜が咲いていた。
ひさしぶりの母校では、
正門の前に、色の濃いシダレザクラが一本揺れている。
校訓の、晴耕雨読の石碑を見ると、
こんな暮らしぶりでと、謝りたくなるのは毎度のことだった。
グラウンドに行ってみたら、向こうの金網越しに、
一本桜の木が在った。ぜんぜん記憶になかったなあ。
桜並木の壮観な眺めも良いが、
いさぎよく一本きりというのも良い。
きれいにならされたグラウンドは、
足を踏み入れるのが申しわけがない。
その場で目を凝らしていたら、丸刈り頭の生徒がやってきて、
ちわっす!とグラウンドに一礼して部室へ駆けていく。
朝から後輩のさわやかな姿を目にできて、
ちょいとうれしかった。
ひと休みにと、
近くのセブンイレブンでコーヒーを飲もうとしたら、
店員のおばちゃんが話しかけてきた。
桜を撮ってきたの?私の実家が中条村なんだけど、
これからは山桜もいいわよという。
そういえば山の桜は、じっくり近くで眺めたことがない。
足を延ばしてみようかなと、つい、そそられたのだった。
上田の桜を
卯月 3
毎年春になると、上田へ桜見物に出かけている。
程よい広さの城跡公園にびっしりと咲くのだった。
昨年はどこもかしこも開花が早かった。
城跡公園の桜も、4月に入って早々に見ごろと成った。
「真田丸」の影響もあって、
混雑の中で眺めたのを覚えている。
パソコンで今年の様子を確かめていたら、
開花して間もなく、城門前のシダレザクラは満開となったのに、
お堀のまわりのソメイヨシノは、まだ5分咲きという。
そろわぬ咲き具合を気にしながら、電車に乗ったのだった。
駅を降りて、わき道を抜けながら公園へ向かう。
上田高校の塀沿いの桜が満開で、
年季の入った門に色を添えていた。
写真を撮っていると、丸刈り頭の野球部員が、
ちわ~っすとあいさつをしながら走って行った。
公園の中へ入っていくと、会社帰りのスーツの人や、
同じジャージの学生たちでわいわいと賑わっている。
城門前の駐車場には飲食のブースが並び、
いい匂いが漂っていてそそられる。
美味だれ焼き鳥とビールで腹を満たして行くと、
写真を撮ったり自撮りをしたり、きれいだねえと感心したり、
たくさんの人が満開のシダレザクラを愛でていた。
門の中へ入っていくと、
お堀のまわりにもテキヤの屋台がずらりと並び、
花も団子も抜かりがない。
真ん中の芝生では、あちこちブルーシートを敷いて、
すでに宴の集団が盛り上がっていた。
ゆっくりまわって行けば、5分咲きというソメイヨシノも、
思いのほか、見ごろに開いていて良かった。
また来週来ようかなと、飽きずに眺めたのだった。
夜風に体が冷えた頃合いに、焼き鳥と日本酒と決めて、
駅前の「ここから」さんへと坂を下りた。

毎年春になると、上田へ桜見物に出かけている。
程よい広さの城跡公園にびっしりと咲くのだった。
昨年はどこもかしこも開花が早かった。
城跡公園の桜も、4月に入って早々に見ごろと成った。
「真田丸」の影響もあって、
混雑の中で眺めたのを覚えている。
パソコンで今年の様子を確かめていたら、
開花して間もなく、城門前のシダレザクラは満開となったのに、
お堀のまわりのソメイヨシノは、まだ5分咲きという。
そろわぬ咲き具合を気にしながら、電車に乗ったのだった。
駅を降りて、わき道を抜けながら公園へ向かう。
上田高校の塀沿いの桜が満開で、
年季の入った門に色を添えていた。
写真を撮っていると、丸刈り頭の野球部員が、
ちわ~っすとあいさつをしながら走って行った。
公園の中へ入っていくと、会社帰りのスーツの人や、
同じジャージの学生たちでわいわいと賑わっている。
城門前の駐車場には飲食のブースが並び、
いい匂いが漂っていてそそられる。
美味だれ焼き鳥とビールで腹を満たして行くと、
写真を撮ったり自撮りをしたり、きれいだねえと感心したり、
たくさんの人が満開のシダレザクラを愛でていた。
門の中へ入っていくと、
お堀のまわりにもテキヤの屋台がずらりと並び、
花も団子も抜かりがない。
真ん中の芝生では、あちこちブルーシートを敷いて、
すでに宴の集団が盛り上がっていた。
ゆっくりまわって行けば、5分咲きというソメイヨシノも、
思いのほか、見ごろに開いていて良かった。
また来週来ようかなと、飽きずに眺めたのだった。
夜風に体が冷えた頃合いに、焼き鳥と日本酒と決めて、
駅前の「ここから」さんへと坂を下りた。
サクラサク
卯月 2
朝、氏神さんの階段を上がって、
境内に2本在る、桜の木を確かめた。
日ごと大きくなっていた蕾が、
ここ2日の陽気の良さに、さらに膨らんでいる。
今日も気温が上がりそうで、
開くかなあとこちらの期待も膨らんだ。
仕事場の掃除を済ませ、朝刊を開いたら、
昨夜、城山公園の花見茶屋が開店したと載っていた。
昨年はずいぶん桜の開花が早く、
茶屋の準備が間に合わなかった。
今年は早々に、梅も咲かぬうちから建てられたのだった。
地元の飲食店が、桜の時期だけ営業する茶屋は、
かつては10軒以上も在って、
花見の酔客でにぎわっていた。
景気の衰えとともに数が減り、
今年は昨年と同じ、5軒の営業という。
桜が見ごろを迎えても、なかなか花冷えの日も多い。
寒さを気にせず酔えるのは、茶屋の良いとこだった。
花見茶屋というのは全国でも珍しく、
長野県でも、建つのは城山公園だけという。
ささやかな庶民のための文化は、
絶やさずに、つづいてもらいたいのだった。
頁をめくったら、上田の城跡公園の記事が載っている。
4月1日から始まった上田千本桜祭りを、
当初の予定より一週間延ばして、
23日までつづけるという。
桜の開花が思ったよりおそいのだった。
なんだか、あちこちの桜の開花がかさなりそうで、
見ごろを逃さずに行けるのか、気もそぞろになってくる。
年々、物ごとへの関心が薄くなっているのに、
春を待つ思いはつよくなっていた。
桜の花を見るたびに、
生きのびられたと感じる歳になっているからと思う。
午前の仕事を終えた昼どき、ふたたび氏神さんに行ったら、
ぽつぽつと開いていた。
春の盛りとなっていくのだった。

朝、氏神さんの階段を上がって、
境内に2本在る、桜の木を確かめた。
日ごと大きくなっていた蕾が、
ここ2日の陽気の良さに、さらに膨らんでいる。
今日も気温が上がりそうで、
開くかなあとこちらの期待も膨らんだ。
仕事場の掃除を済ませ、朝刊を開いたら、
昨夜、城山公園の花見茶屋が開店したと載っていた。
昨年はずいぶん桜の開花が早く、
茶屋の準備が間に合わなかった。
今年は早々に、梅も咲かぬうちから建てられたのだった。
地元の飲食店が、桜の時期だけ営業する茶屋は、
かつては10軒以上も在って、
花見の酔客でにぎわっていた。
景気の衰えとともに数が減り、
今年は昨年と同じ、5軒の営業という。
桜が見ごろを迎えても、なかなか花冷えの日も多い。
寒さを気にせず酔えるのは、茶屋の良いとこだった。
花見茶屋というのは全国でも珍しく、
長野県でも、建つのは城山公園だけという。
ささやかな庶民のための文化は、
絶やさずに、つづいてもらいたいのだった。
頁をめくったら、上田の城跡公園の記事が載っている。
4月1日から始まった上田千本桜祭りを、
当初の予定より一週間延ばして、
23日までつづけるという。
桜の開花が思ったよりおそいのだった。
なんだか、あちこちの桜の開花がかさなりそうで、
見ごろを逃さずに行けるのか、気もそぞろになってくる。
年々、物ごとへの関心が薄くなっているのに、
春を待つ思いはつよくなっていた。
桜の花を見るたびに、
生きのびられたと感じる歳になっているからと思う。
午前の仕事を終えた昼どき、ふたたび氏神さんに行ったら、
ぽつぽつと開いていた。
春の盛りとなっていくのだった。
この春が来て
卯月 1
毎朝ヨーグルトを食べている。
明治ブルガリアハネーヨーグルトを一日ひとつ。
3年ほど前に、
試食品をもって男性が訪ねてきたのだった。
とても感じの良いかただったのに、一目見て、
かつらをかぶっているとわかった。
話をしながら目線が頭に向いてしまい、
困ったのを覚えている。
昔から、胃腸が弱い柄だった。
外食で油のつよいものを食べると、
じきにお腹がこわれた。帰り道のさなか、
あわててトイレを探すはめになるのだった。
それがヨーグルトのおかげで、
この頃はすっかり具合が良い。
継続は力なりと実感したものの、
喜んでばかりもいられなかった。
そもそも食べ始めたのは、
花粉症に効くと聞いたからだった。
春が来るたびに目と鼻をぐしょぐしょにして、
これさえなければなあと思っていた。
1年目2年目は、効果のほどが見られなかった。
いよいよ今年あたりは、乳酸菌が花粉に勝つかと
様子をうかがっていたら、
なんのことはない、梅が咲ききらぬうちに襲われて、
例年通り、鼻炎薬と目薬の世話になる始末だった。
期待を裏切られて、もうやめようかと思ったものの、
胃腸が整っただけでも良いことだし、
火曜日と金曜日、
配達してくれるお姉さんがきれいなのも良いことだし、
もうしばらくつづけることにした。
4月6日、
ピカピカのランドセルを背負ったちいさな子たちが、
お父さんとお母さんと通りを上がっていく。
はればれと、城山小学校の入学式だった。
界隈では梅が咲き、桜のつぼみも日ごと膨らんでいる。
今年の春だなあ。
愛車、ベンリー50Sのタイヤを新品に換えて、
バイク散歩の準備もできた。
花粉が舞おうが槍が降ろうが、春が来たのはめでたい。
楽しんでいきたいのだった。

毎朝ヨーグルトを食べている。
明治ブルガリアハネーヨーグルトを一日ひとつ。
3年ほど前に、
試食品をもって男性が訪ねてきたのだった。
とても感じの良いかただったのに、一目見て、
かつらをかぶっているとわかった。
話をしながら目線が頭に向いてしまい、
困ったのを覚えている。
昔から、胃腸が弱い柄だった。
外食で油のつよいものを食べると、
じきにお腹がこわれた。帰り道のさなか、
あわててトイレを探すはめになるのだった。
それがヨーグルトのおかげで、
この頃はすっかり具合が良い。
継続は力なりと実感したものの、
喜んでばかりもいられなかった。
そもそも食べ始めたのは、
花粉症に効くと聞いたからだった。
春が来るたびに目と鼻をぐしょぐしょにして、
これさえなければなあと思っていた。
1年目2年目は、効果のほどが見られなかった。
いよいよ今年あたりは、乳酸菌が花粉に勝つかと
様子をうかがっていたら、
なんのことはない、梅が咲ききらぬうちに襲われて、
例年通り、鼻炎薬と目薬の世話になる始末だった。
期待を裏切られて、もうやめようかと思ったものの、
胃腸が整っただけでも良いことだし、
火曜日と金曜日、
配達してくれるお姉さんがきれいなのも良いことだし、
もうしばらくつづけることにした。
4月6日、
ピカピカのランドセルを背負ったちいさな子たちが、
お父さんとお母さんと通りを上がっていく。
はればれと、城山小学校の入学式だった。
界隈では梅が咲き、桜のつぼみも日ごと膨らんでいる。
今年の春だなあ。
愛車、ベンリー50Sのタイヤを新品に換えて、
バイク散歩の準備もできた。
花粉が舞おうが槍が降ろうが、春が来たのはめでたい。
楽しんでいきたいのだった。