インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8

アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 11人
オーナーへメッセージ

小三治さんのお話を

2014年10月31日

 へこりと at 08:16  | Comments(0)
神無月 十一

柳家小三治さんの独演会へ出かけた。
前座のろべえさんが場をなごませたあと、
ひょうひょうと舞台にあらわれた。
落語ってものは、笑わそうとたくらんじゃいけません。
おもわず顔がほころぶ、そんなのが良いんです。
まくらから転じて、釣り好きのご隠居がしゃれこうべを釣る、
野ざらしという話へと入っていった。
中休みをはさんで、御自身の趣味の話をする。
四十歳のときにバイクに乗り始めたという。
当時、ソフィア・ローレンがCMに出ていた、
ホンダのラッタッタを買った。
飛騨へ行こうと思いつき、山道を走っていたら、
道をまちがえて、行き止まりになったという。
広いすそ野のむこうに、
逆光のなかそびえたつ、おおきな山が目に飛び込んできた。
御嶽山なのだった。
あのときの御嶽山は、
まちがいなく富士山よりおおきかったといい、
それほど見事だったという。
あの山はときどきお怒りになるんですねえ。
あたしが出かけたころも噴火をしましたと、
しみじみという。
ひき返した道すがら、一軒のよろずやがあって、
新そばの貼り紙が目に入った。
赤ん坊をおんぶしたじいさんが店番をしていて、
そばはうらの畑で作っているという。
あたしゃ昔からそば好きですが、あとにもさきにも、
あんなに旨いそばは食べたことがありません。
開田高原という名産地だったんですなと、
信州そばの思い出から、時そばの話へ入ってゆく。
江戸時代、夜分の屋台のそば屋は、一杯、
二×八の十六文。
男相手の夜鷹は、客一人二十四文。
ふたり相手にすると、三杯食べられた。
そんな風情もおりまぜながら、
そば屋と客のやりとりがつづく。
そばを食べるしぐさに汁を飲むしぐさに、喉がなる。
あわあわとした語り口は、聞いていて疲れない。
日向ぼっこのような気分で、笑わせていただいた。
帰り道、今夜のお客は、そば屋をうろうろ探すにちがいない。
お客の中にはちいさい姿もちらほら在った。
おとうさん、夜鷹ってなあに?
そんなことを尋ねて親をこまらせる。
それもまた、好いのだった。






  


上田ぶらぶら

2014年10月30日

 へこりと at 10:31  | Comments(0)
神無月 十

上田の町が気に入りで、ときどき出かける。
秋を眺めに行ったのだった。
信濃国分寺駅で電車を降りて、国分寺への坂を上がる。
三重塔のそびえる境内では、いちょうにもみじの黄に赤が、
色を添えている。
平日の古刹はひと気がない。
しずかな本堂で手を合わせた。
家の並ぶわき道を行けば、
朱色の実もたわわな、おおきな柿の木があった。
ふるいお宅の庭から、南天の実がはみだしている。
七五三ののぼりの揺れる科野神社の境内に
きらきらと高いいちょうの木が見えた。
立ち寄って手を合わせた。
上田駅前に来れば、時間もお昼とちょうど好い。
小路を抜けて行けば、
蕎麦屋の刀屋の店先に、相変わらず行列ができている。
ゆっくり昼酒たしなむ身は、素通りして、
原町の太平庵へおじゃまする。
囲炉裏の席で、ちくわをつまみにビールを飲んでいれば、
つぎつぎと、旅姿のお客が入ってくる。
元気なおばちゃんグループの笑い声を聞きながら、
自家製豆腐で亀齢と登水を酌み、もりで締めた。
上田城跡公園も、観光客の団体さんでにぎわっていた。
けやき並木は、盛りにはすこし早いものの、
高々黄色が映えていた。
お堀ばたの桜にもみじにいちょうも色づいて、
あちこちで、カメラを構える人がいる。
ひとまわり、愛でてから下りて行けば、
上田アリオの前に、
出来たばかりのサントミューゼがでかい。
コンクリートの建物のむこう、
今にも降りそうな厚い雲を眺めてから、
駅前で友だちと落ち合った。
電車に乗って別所温泉に行けば、
ちらほら温泉客の姿がある。
大師湯でひと風呂浴びて、上田駅前に戻ったら、
ふるい焼き鳥屋の暖簾をくぐる。
焼き鳥十本、もつ煮、生ビールに酎ハイで、
ひとり千五百円は安かった。
地酒のそろう店へとはしごして、刺身で杯をかさねた。
秋の終わる前にまた訪れて、
あたらしい店を一、二軒、開拓したいのだった。




  


御身大事に

2014年10月24日

 へこりと at 10:26  | Comments(0)
神無月 九

御年八十四歳になる父は、おおきな病気をしたことがない。
いまでも、毎日五合の酒を飲み、煙草をひと箱吸っている。
その父が体調をくずした。
秋のはじめに、熱が出て体がだるくなった。
病院で調べてもらったら、
腎臓にばい菌が入って、免疫力がおちているという。
薬を飲んで安静にしていたら回復したものの、
それだけで済まなかった。
気になる箇所が見つかったと言われたのだった。
本人にはまったく自覚がなかったから、
青天の霹靂なこととなる。
日をおいて、ふたたび病院へ行く。
機械の中に入ったり、胃カメラを飲んだり、
体のあちこちを診てもらう。
結果を聞く日、父に付き添って病院へ出向いた。
担当のお医者は、面差しやさしい若い先生で、
神様のカルテにそのまま出ても違和感がない。
父の問診票を見たら、
一日の酒量、二合、煙草は十本と書いてあり、
ずいぶんさばを読んでいてあきれた。
パソコンの画面を見ながら説明を聞けば、
なかなか判断に迷う結果だといい、
念のため、もうひとつ検査をうけることとなった。
検査入院をした日、夕方病室へうかがえば、
疲れた様子で、ベッドで点滴を受けていた。
検査を受けるだけでも、
老体にはずいぶんこたえることだった。
長生きするのも楽じゃないと思うのだった。
結果を受けてこのたびは、
手術をしないで治療することと相成った。
無事の回復叶いますよう、
氏神さんと仏さんに手を合わせたい。




  


とうふ好んで

2014年10月23日

 へこりと at 09:13  | Comments(0)
神無月 八

とうふが好きで、晩酌のつまみにしている。
飲み屋で注文したときに、好い味だと、
どこのとうふ屋か尋ねてしまう。
ふだんは、近所の店で買っている。
肉屋で売っているのは、伝田豆腐店さんのやつ。
八百屋で売っているのは、山上豆腐店さんのやつ。
生地のかたさにちがいがあって、どちらも旨い。
コンビニで、ビールのついでに買うときもある。
ちかごろは、安いわりに味が好い。
近所に、日本酒をたしなむ知り合いがいる。
訪ねて来たときに、とうふ談義となった。
三輪田町にある、江口豆腐店がひいきだといい、
あそこは好いですねと頷いた。
朝、店の前を通ると、白衣に三角巾の奥さんが
いつもきびきび働いている。木綿と厚揚げが気に入りで、
最近、足が遠のいていたと思いだす。
おまけに、おぼろ豆腐と枝豆豆腐と、
十一月から発売される、けんちん巻きも美味しいと、
初めての情報も教えていただいて、
燈台下暗し、知らなかったのはうかつなことだった。
次の日、近所の友だちを訪ねる用事があった。
思いついて、江口とうふ店へまわり道をする。
厚揚げとおぼろ豆腐をふたつづつ。
晩酌用と、友だちへの手土産に求めた。
これまで、
いくつか気に入りのとうふ屋があったものの、
ちいさい店は、たいがい年配のご夫婦がやっている。
気がついたら、
店じまいをしていたということもあったから、
現役でがんばっている店には、
しばしば通わなくてはいけないのだった。
ゆっくりとうふで一献。
素朴なぜいたくと思うようになっている。



  


氏神さんのそばで

2014年10月17日

 へこりと at 16:29  | Comments(0)
神無月 七

住んでいる東之門町の秋祭りが行われた。
氏神さんの伊勢社から、神輿を担いで町内をねり歩く。
ふるい町なので、若い人がすくない。
青年部があるものの、青年はどこですかというくらい、
くたびれたおじさんの集まりになっている。
当日は、あちこちの町の祭り好きのかたがたに、
神輿担ぎの加勢に来ていただくのだった。
年季の入ったおじさんに、
力の有り余っていそうなおにいさん。
妙齢のきれいな女性陣も来て、
道中、料理屋と蕎麦屋と酒屋で飲み食いしながら、
栄養補給をしてひとまわり。
今年もみなさんのお力添えで、無事終えられた。
毎朝、氏神さんにお参りをしている。
家内安全に効くといい、さえない男やもめの身でも、
毎日好きな酒が酌めている。
それも家内安全のうちと、御利益承っているのだった。
手持無沙汰になると、狛犬の前で景色を眺めている。
旭山の紅葉も日ごと色づいてきた。
ふるいビルのシェアハウスの屋上では、
洗濯物が風に揺れている。眼下の道を、
黄色い帽子の園児たちが、歌いながら過ぎて行く。
バナナがいっぽんありましたあ
とおいみなみのそらのしたあ
つられて歌ってしまった。
おおらかな秋の空を眺めていると、
まあ、こんなもんで好いではないか。
気持ちがたいらになるのだった。
祭りの後片付けをして、家に戻って風呂上り、
冷や酒を酌みながらニュースを観た。
噴火した御嶽山の捜索活動は、本日で打ち切り。
阿部知事が会見されていた。
ふだんの日々の在り方が、充分ありがたい。
あらためて思う三週間に成る。



  


マンガのちから

2014年10月15日

 へこりと at 08:02  | Comments(0)
神無月 六

休日、台風の影響で、朝から天気がぐずついた。
こんな日は近所で過ごすのが好いと、
信濃美術館へ出かけた。
マンガのちから展をやっているのだった。
子供のころ、
ジャンプにチャンピオンにサンデーにマガジン、
マンガ雑誌が全盛のときだった。
買ったり立ち読みをしたり。
ドカベン、アストロ球団、サーキットの狼、
ワイルド7にあられちゃんにマカロニほうれんそう、
両さんの、亀有公園前派出所は、
まだ連載中というからおどろく。
少女漫画では、ベルサイユの薔薇にエースをねらえ。
クラスの女の子に、単行本が出るたびに借りていた。
展覧会は、手塚治虫さんと石ノ森章太郎さんの、
原画が中心に飾られていた。
ブラック・ジャックに仮面ライダーにキカイダー、
雑誌に連載していたり、テレビで放映されていた作品が
なつかしく、見入ってしまう。
ゴレンジャーがさきがけの戦隊ものは、
今、放送中のトッキュウジャーまで受け継がれ、
息が長い。
鉄腕アトムの放送は、昭和38年から3年間という。
幼いころのことなのに、
四本足の白黒テレビで観たのをおぼえている。
館内に、かつて漫画家のかたがたが暮らしていた、
トキワ荘が再現されていた。
質素なアパートで、一枚一枚手描きで仕上げた作品が、
今もこうして記憶に残る。
文化の力づよさと思うのだった。


  


お蔵さんがたと

2014年10月14日

 へこりと at 09:24  | Comments(0)
神無月 五

毎日、日本酒を酌んでいる。
世話になっている、酒屋さんとお蔵さんがたの宴に
混ぜていただいた。
秋も深まり、いよいよ酒造りの時期となる。
今年は夏のはじめから、天気の様子がおかしかった。
酒米の出来を心配していたら、
好い米が収穫できて安心したという。
ここ最近、好い味を醸すお蔵さんが、
すこしづつ増えている。
日ごろの付き合いを大事にして、
地元の農家さんの米を使うお蔵さんもあれば、
県外の高級な米を、積極的に使うお蔵さんもある。
長野県の木島平村では、全国で唯一、
金紋錦という酒米を作っている。
はじめは、二軒の地元のお蔵さんが使っていた。
このごろは、県内のあちこちのお蔵さんで使うようになり、
それぞれ、個性のある味を楽しませてくれている。
その一方で、米の出来は、毎年天候に左右される。
万が一のために、容易に手に入る食用米で、
旨い酒を造る試みをしているお蔵さんもある。
それぞれ酒屋万流で、今季の造りに取り組むのだった。
付き合いのあるお蔵さんは、どこもちいさい。
すくない人数で、掃除に仕込み、瓶詰めに配達、
すべてこなさなければいけないから、大変なことだった。
土曜日の夕方、宴を供にした蔵人さんが訪ねてきてくれた。
すでに、造りが始まっているといい、
絞ったばかりの新酒を持ってきてくれた。
出来たばかりの味を酌みながら、
みなさん、無事の造りをして往けますよう願った。




  


ワインを手土産に

2014年10月09日

 へこりと at 11:43  | Comments(2)
神無月 四

ひさしぶりの友だちが訪ねてきた。
長いあいだ、ホテルのレストランのサービスをしていて、
ワインに詳しい。
この日は、ポルトガルの赤を手土産に、
来てくれたのだった。
あちこち、県内外のホテルで働いてきて、
今は、湖のある町のホテルに勤めている。
馴染みの飲み屋で、酌み交わしながら様子を聞けば、
ため息交じりに話しだす。
なにしろ、スタッフにやる気がなくて困るというのだった。
テーブルセッティングをいくら教えても、
ナイフとフォークの置く順番をまちがえる。
お客の前で、あだ名で呼び合う。
ワインに料理、
進んで利くことをしないから、説明ができない。
雰囲気を出すために照明を落としているものの、
暗すぎて、ワインに料理が目で楽しめない。
そのつど注意をしていたら、
マネージャーに呼ばれたという。
あまりうるさく言うとやる気をなくすから、
加減してくれと言われ、
開いた口がふさがらなかったという。
おまけに料理が不味いときてるから、始末に負えない。
非番のときにいちど食べに出かけたという。
茄子が苦手と伝えたのに、
出てきた料理に、しっかりと入っていてあきれた。
ソースの味もいまひとつで、苦言をほどこしたら、
コックが機嫌をわるくした。
次の日から、仕事の合間のまかないに、
かならず茄子が入るようになったと、
苦笑いをうかべた。
会社に若いスタッフを育てる気がないから、
みんな、なんとなく働くだけになっている。
スタッフにもお客にも、
よろしくないホテルと思いながら聞いた。
この歳になり、
通う店を思いだせば、どの店も、
お通しひとつ、前菜ひとつから、見た目も味も楽しめる。
丁寧で気さくな接客は、居心地好くひとときを過ごせる。
店に恵まれていると思ってしまうのだった。
ホテルとの契約は、来月末までという。
そのあとは、別のホテルに勤めるという。
時間が空いたら、また好い店で一献を。
思いながら別れた。









  


頭が下がる

2014年10月05日

 へこりと at 13:19  | Comments(0)
神無月 三

木曽の御嶽山が噴火した。
折しも快晴の昼どきで、頂上には登山客のかたがたがいた。
たくさんの犠牲者が出てしまい、ニュースを観るたびに切ない。
近所の山好きのおじさんは、
噴火のあった日に、ひとりで御嶽山に登っていたという。
大滝口から八合目まで来たときに、上から人が逃げてきた。
噴火したと聞いて、あわててひき返して、
ことなきを得たのだった。
わずかな時間の差が生死を分けた。
もし噴火が朝方だったら、
天気がわるくて登る人がいなかったら、
考えても仕方のないことが、頭の中をよぎってしまう。
木曽に暮らす友だちがいて、ときどき訪ねてゆく。
開田高原へ連れて行ってもらえば、
かなたに御嶽山が見える。
今までは、威風堂々とした山と、さっぱりと眺めていた。
これからは目にするたびに、
自然の脅威を思いださずにはいられない。
二十年前に、友だちと一緒に登ったことがある。
あの日もたくさんの登山客でにぎわっていた。
登っているときに、力づよく進んで行く集団と遭遇した。
自衛隊のかたがたの訓練登山で、足取りが早かった。
休息のときも座らずに、
しゃがんで呼吸を整えながら、格がちがいますと、
まわりを囲む、たくましいかたがたを眺めた。
連日、テレビでは、自衛隊に消防隊に警察官、
救助に向かうかたがたの姿が映されている。
きびしい訓練を経て、
危険な現場で黙々と活動する姿には、
頭が下がる思いになる。
大型の台風が近づいているという。
雨風が、救助の妨げにならぬように願いたい。


  


ウヰスキーも好きで

2014年10月04日

 へこりと at 13:32  | Comments(0)
神無月 二

ときどきウイスキーをなめている。
秋の夜長、だらだらと、琥珀色の濃い味に酔っている。
かつては、もっと家庭でも飲まれていた覚えがある。
テレビでもさかんにCMが流れていて、
サントリーとニッカが売り上げを競っていた。
今は日本酒ばかりの父親も、
若いときは、安いウイスキーも飲んでいた。
食器棚の中には、頂き物のサントリーオールドの、
丸くて黒い瓶が、いつも鎮座していた。
今では手軽に買えるオールドも、
その当時は高級品だった。
貧乏性の父は、なかなか封を切れないのだった。
ひさしぶりに、朝の連続テレビ小説を観ている。
あぐりいらいだから、毎朝テレビの前に座るのは、
17年ぶりのことだった。
マッサンは、大正時代、
日本で初めてウイスキーを造った青年と、
その妻の物語だった。
本場のウイスキー造りを学ぶため、
スコットランドに渡った亀山政春は、
エリーと知り合い、恋に落ちる。
結婚した二人は、いろんな困難をのりこえて、
ウイスキー造りに励んでいくのだった。
この物語は、ニッカの創業者の竹鶴政孝と、
妻のリタをモデルにしている。
スコットランドで修業を終えた政孝は、
リタを連れて日本に帰ってくる。
サントリーに入社したあとの昭和4年に、
初の、本格的な国産ウイスキーを誕生させた。
十年勤めたあとに独立をして、
北海道の余市に、蒸留所を設立した。
ウイスキーが売れないきびしいときも、
リタは政孝を支えつづけた。
まだ国際結婚に抵抗のあった時代、夫の夢のために、
はるばる遠い島国へ来るのは、
たいそうえらいことだった。
旨い酒が飲めるのも、こうした先人の、
覚悟のおかげがあってこそと、ありがたいのだった。
中央通り、丸本洋酒店のすぐそばに、
リタという名のバーがある。
気さくな女性バーテンダーが営んでいて、
檜のカウンターの清潔な店内には
リタの写真が飾ってある。
拝みながら、一杯やりたくなってきた。




  


秋のぜいたく

2014年10月01日

 へこりと at 15:22  | Comments(0)
神無月 一

朝、となりの湯本さんがひょっこり顔を出す。
栗ごはんを炊いたからと、持ってきてくれたのだった。
秋の味の差し入れがありがたく、昼にたいらげた。
晩酌は、焼き秋刀魚を突っつく日がつづく。
ガス台のグリルを使うと、洗うのがめんどうくさい。
ホットプレートで、じっくりゆっくり焼いていれば、
ビールを飲みながら待つ間もまた楽しい。
近所の肉屋の奥さんが訪ねてきた。
夕べ炊いたからと、松茸ごはんを持ってきてくれて、
これまたうれしい差し入れだった。
松茸、今年は口にできるかと、秋になると、
頭のすみで気にかかる。以前、父母といっしょに、
上田の松茸山荘に行ったことがある。
林の中にある小屋で、素焼きで、鍋で、土瓶蒸しで、
松茸ごはんで堪能した。
昨年は、母が定期が満期になったからと、
近所の料理屋で、松茸コースをごちそうしてくれた。
馴染みの飲み屋の若だんなは、
国産松茸を、儲けなしの値段で提供してくれて、
太っ腹なことと感心した。
買えばいくらするのかと調べてみたら、
岩手産の形の不揃いなのが、150gで12000円。
飲みに行くのを、二回がまんすればと思案する。
丹波産のは300gで60000円で、
さすがにこれは手が出ない。
夜、友だち夫婦と飲み会をした。
飲み屋に着くなり、がさごそと包みを取り出して、
なにかと思えば、りっぱな松茸が出てきておどろく。
松茸山を所有しているかたと、
知り合いになったという。
売り物にならない品を、ときどき分けてくれるといい、
それはなんともうらやましいことなのだった。
ご主人にホイル焼きにしてもらったら、
華やかな香りと、
歯触りの好い食感がすばらしいと、ほれぼれとした。
思いがけないぜいたくに、
今年はこれ一回でじゅうぶん満足ですと感謝する。