かっこいい爺に。
2025年05月02日
へこりと at 08:00 | Comments(2)
皐月 1
権堂アーケードの松竹相生座へ、
「アンジーのバーで会いましょう」を観に行った。
ある町に、アンジーという名の老婆がやってくる。
朽ち果てたぼろ家を借りて、リフォームしてバーを開くの
だった。素性のわからぬアンジーと接するうちに、
町のかたがたも明るい刺激を受けていく物語だった。
アンジーを演じたのは草笛光子さん。御年九十一歳に
なられる。
赤いドレスに赤い帽子。銀髪をなびかせた颯爽とした姿は、
歳を感じさせずなんともかっこいい。
観終えて元気をもらったことだった。
先だって実家で、亡くなった母の遺品を片付けて
いたら、仏壇の引き出しから古びた封書が出てきた。
覗いてみたら、母方の祖父母と叔父の戒名と亡くなった
日付が書いてあった。信心深い母だったから、
それぞれの命日にお経を唱えていたのかもしれない。
祖父は宮大工をしていて、羽振りが良かったという。
恰幅が良くて、上等の着物や洋服を着こなして女性に
モテていた。
酒が一滴も飲めぬのに、なにしろ女好きだった。
湯田中や戸倉上山田の温泉街に繰り出しては芸者遊びに
精を出していた。祖父に惚れた芸者さんもいて、
若い頃はお妾さんを三人囲っていた。
晩年は、そのうちの一人と善光寺の裏手に居を構え、
亡くなるまで暮らしていた。そんな祖父に対して、祖母は
文句の一つも言わなかったというから、今の時代なら
考えられないことだった。
祖父は七十四歳のときに胃がんで亡くなった。
今ほど医療が進んでいなかったから、苦しんで苦しんで
逝ったという。
祖母をさんざん悲しませたから罰が当たったんだと、母が
言っていたのを覚えている。
祖父が逝った後、一緒に暮らしていたお妾さんは、祖父の
有り金掻っさらって行方をくらましてしまった。
母がずいぶん憤慨していたっけ。
おしゃれだった祖父の娘らしく、母も若いときから衣服や
着物や宝石に金をかけていた。母が亡くなった後、
たくさんの衣類を身内や知人に差し上げたものの、
高級だけどあまりに柄が派手すぎて、誰も着こなせない
服もあり、いまだ自宅に残してある。祖父と母を見習って
かっこいいじじいになりたいものだった。
祖父ほどの甲斐性もなく夏衣。
この記事へのコメント
へべれけな姿さらさなければ、
へこりとさんもなかなか粋なオヤジなのにねえ。
下世話な詮索だけど、
行方をくらませたお妾さん、
どうなったんでしょうね。
へこりとさんもなかなか粋なオヤジなのにねえ。
下世話な詮索だけど、
行方をくらませたお妾さん、
どうなったんでしょうね。
Posted by 上穂悠生
at 2025年05月03日 21:48

ほんとにねえ。この頃酒が弱くなったのをつくづく感じています。
特に昼の酔いの抜けが悪くなってます。
お妾さん、どんな人生をその後歩んだんでしょうね。
特に昼の酔いの抜けが悪くなってます。
お妾さん、どんな人生をその後歩んだんでしょうね。
Posted by へこりと
at 2025年05月06日 07:29
