詫びたい気持ち
2015年12月29日
へこりと at 10:39 | Comments(0)
師走 7
新聞のお悔やみ欄に、覚えのある名前を見つけた。
ちいさな町の酒蔵で、杜氏をしていたかただった。
造っていたのは、界隈の酒屋へ行けば、
たいてい目にする銘柄で、なんどか口にしたことがある。
ところが、味が好みに合わず、
すすんで買うことのない銘柄なのだった。
好みに合わないのは味だけではなかった。
お蔵の前を通りかかれば、
入口に、「日本で一番小さな酒蔵」と看板が出ていた。
そのわりには、テレビでCMを流しているし、
新聞にも広告を頻繁に載せている。
都会で暮らす友だちからは、
スーパーで山積みで売ってたよと報告が来るし、
およそちいさいお蔵にふさわしくない構えに、
なんだかなあと思ってしまうのだった。
品評会へ出す酒は、金賞を取るほどの出来栄えで、
そのたびに宣伝をしている。
うらはらに、地元のかたがふだん飲む安い酒は、
他のお蔵の酒を使っているのも、
地元をないがしろにしていて気に入らない。
安い酒にも真摯に向き合う、
ちいさなお蔵を知っている身には、
ぜんぜん縁がいらないのだった。
亡くなった杜氏さんと初めてお会いしたときに、
宴の席を御一緒したことがある。
売り物ではないんですがと、
仕込んだばかりの酒を持ってきていて、
利かせてもらったら、
売っている酒よりも、きれいで旨くておどろいた。
後日飲み屋の御主人に、
こんなにうまい酒が造れるのに、
なんであんな蔵に勤めているんだと、
さかんに絡んでいたと聞かされて、
酔ったいきおいで失礼なことをと焦った。
半年ほどして再びお会いしたときに、
かつての非礼を詫びたら、
わたしも酔っていて、
そのときの記憶がありませんと笑ったのは、
たちのわるい酔っぱらいへの思いやりだった。
亡くなられたあとに、後輩の杜氏さんに、
いつか造りたい酒があると話していたと知り、
お蔵と造りの間で、
いちばん屈託を抱えていたのは、
本人だったかもしれず、
ほんとに申しわけのないことをした。
忘年会の帰り道、立ち寄ったラーメン屋に、
造っていた銘柄が置いてあった。
ご冥福を祈りながら、一杯酌ませてもらった。

新聞のお悔やみ欄に、覚えのある名前を見つけた。
ちいさな町の酒蔵で、杜氏をしていたかただった。
造っていたのは、界隈の酒屋へ行けば、
たいてい目にする銘柄で、なんどか口にしたことがある。
ところが、味が好みに合わず、
すすんで買うことのない銘柄なのだった。
好みに合わないのは味だけではなかった。
お蔵の前を通りかかれば、
入口に、「日本で一番小さな酒蔵」と看板が出ていた。
そのわりには、テレビでCMを流しているし、
新聞にも広告を頻繁に載せている。
都会で暮らす友だちからは、
スーパーで山積みで売ってたよと報告が来るし、
およそちいさいお蔵にふさわしくない構えに、
なんだかなあと思ってしまうのだった。
品評会へ出す酒は、金賞を取るほどの出来栄えで、
そのたびに宣伝をしている。
うらはらに、地元のかたがふだん飲む安い酒は、
他のお蔵の酒を使っているのも、
地元をないがしろにしていて気に入らない。
安い酒にも真摯に向き合う、
ちいさなお蔵を知っている身には、
ぜんぜん縁がいらないのだった。
亡くなった杜氏さんと初めてお会いしたときに、
宴の席を御一緒したことがある。
売り物ではないんですがと、
仕込んだばかりの酒を持ってきていて、
利かせてもらったら、
売っている酒よりも、きれいで旨くておどろいた。
後日飲み屋の御主人に、
こんなにうまい酒が造れるのに、
なんであんな蔵に勤めているんだと、
さかんに絡んでいたと聞かされて、
酔ったいきおいで失礼なことをと焦った。
半年ほどして再びお会いしたときに、
かつての非礼を詫びたら、
わたしも酔っていて、
そのときの記憶がありませんと笑ったのは、
たちのわるい酔っぱらいへの思いやりだった。
亡くなられたあとに、後輩の杜氏さんに、
いつか造りたい酒があると話していたと知り、
お蔵と造りの間で、
いちばん屈託を抱えていたのは、
本人だったかもしれず、
ほんとに申しわけのないことをした。
忘年会の帰り道、立ち寄ったラーメン屋に、
造っていた銘柄が置いてあった。
ご冥福を祈りながら、一杯酌ませてもらった。
