門前町愛着
睦月 四
雪が降っても二日とつづかないからありがたい。
さっぱり晴れた空に、向かいのお宅の煙突から
もくもく煙がのぼってゆく。
薪ストーブ、今日も活躍してますね。
冷え込みきびしい日は煙のいきおいも増し、
路地に燻った匂いが流れてくれば、
なんだかなつかしい気持ちになる。
年明けから成人式をはさんだ連休をすぎて、
善光寺のにぎやかさも落ち着いてきた。
小路を歩いていれば、目にする景色の移り変わりや
肌に感じる風の気配に季節を感じ、
善光寺や菩提寺の寛慶寺で手を合わせれば、気持ちが落ち着く。
この町に住んでことに好いのは
飲み屋の並ぶ権堂や鶴賀界隈に十分で行けることで、
行きは気が急いてさっさと行けるものの
帰りは酩酊してじぐざぐに歩いてくるから
ずいぶんと家までが遠い。
西に向って二十五分歩けば川沿いに温泉があるから
休みの日はおじいさんたちに混じってひと風呂浴びている。
昔に比べると店の数も減り、行きかう人の姿もすくなくなった。
それでもこのところ古い空き家に若い人たちが住み始め
商いを始めたりしているから、町に彩りが出たのは良いことだった。
パスタ屋にカフェ、雑貨屋にケーキ屋に、
もうじきピザ屋もできるという。
権堂へ下りていく中ほどに、若いご夫婦の始めた飲み屋がある。
道すがら、ビール一杯ひっかけてと立ち寄れば
つまみの旨さに日本酒まで飲んでしまい
すっかり出来上がって下りていくこととなる。
休みの日にゆっくり昼酒を楽しめる、旨い蕎麦屋が近くにあるのも
蕎麦好きにはありがたく。
遠出をしなくても、ふらふら歩く範囲で
ぜいたくな時間を過ごせるのはなによりのことだった。
蕎麦屋で過ごしたあとは、きまって西沢書店で本を一冊買って帰る。
小学生のときにエッチな本を立ち読みしていて
おじさんに怒られたことがある。
おじさんは今も元気に店に出ている。