休みの日に
師走 二
朝風呂に出かけた。
冷えこんだ朝、今日は一日気温が上がらないという。
ゆっくり歩いて二十五分。
散歩にほど良い距離に温泉があるのはありがたい。
ぬるめのお湯に体を浸せば、
思わず、ああ、しあわせと声に出て、
ほんとに隠居じいさんのようだと、我ながら思う。
ゆっくり体を温めて帰り道を行けば、
長野商業のグラウンドで、先生がひとりもくもくと白線を引いている。
自転車に乗った男子生徒が追い抜きざま、
おはようございますと声をかけてくれた。
休日の朝ごはんは近所の喫茶店で食べている。
ご飯に味噌汁漬け物に、野菜の小鉢と煮物の小鉢と焼き魚で
五百円也。
珈琲をたのむと百円増しになる。
朝ごはんを済ませて、洗濯物を干して、
厚着をしてバイクに乗って、東和田の平安堂まで出かけた。
のんびり走っていても風の冷たさが顔に刺さり、涙が出てくる。
めがねをかけてくればよかったと後悔した。
平安堂で、稲葉稔さんの時代小説を二冊と
表紙の絵に惹かれて、芥川龍之介さんの
くもの糸 杜子春を買った。
くもの糸は小学校、杜子春は中学校の教科書に載っていた気がして
なつかしい。
帰り道の途中に、年配のご夫婦が営んでいる豆腐屋がある。
今夜は、厚揚げに大根おろしをたっぷり添えて、御湖鶴の燗酒をゆるりと。
はやばや晩酌の算段をして、立ち寄った。
いちど家に戻ってから、善光寺の西側、
桜枝町にある峰福堂さんまで出向く。。
老舗の和菓子屋さんで、弥生御前という菓子が
以前人さまから頂いてからの気に入りで、
遠くの知り合いに送ろうと買い求めた。
くるみと砂糖の素朴な味は、抹茶にも珈琲にも合う。
午前中ですっかり予定の用事を済ませたら、
気分もはればれ、昼は元屋で七笑の燗酒と、足を運んだ。
杜子春の表紙のイラストは、南伸坊さんの作品だった。
春の日暮れ、唐の都洛陽の西の門の下に
ぼんやり空をあおいでいる若者あり。
力の抜けたたずまいが好い。
こんな感じで往きたいものだなあ。