六蔵の方々と
霜月 四
北信の酒がおもしろい。
酒蔵の方々と宴をした。
酒屋の峯村君のはからいで、席に混ぜてもらったのだった。
鴨鍋をつっつきながらそれぞれの酒を楽しんだ。
信濃町の松尾は、今の杜氏さんになってから
酒の味がきれいになった。
以前は独特の老ねた香りがあって、飲むたびに気になっていた。
杜氏の駒村さんは、さらにきれいな味をめざしたいという。
千曲市のオバステ正宗は、造る酒をすべて純米酒だけにした。
月のきれいな棚田の町の酒らしい、
レトロな月の絵柄のラベルにも味がある。
川中島の幻舞と、信州新町の十九は、女性の杜氏が酒を仕込んでいる。
幻舞は香りの印象がつよく、舌の疎い身でも、この味だけはすぐにわかる。
十九は、その酒質が県外の酒屋さんにも注目されるようになり、
センスのいいラベルのデザインもインパクトがあって目をひく。
篠ノ井の積善と飯山の北光正宗は、杜氏さんがそれぞれ蔵の跡取り息子で
ともに二十六歳と若く、東京農大の同級生だという。
積善の杜氏さんはがっしりした体格で、ひげなんぞをはやしているから
ワイルドな印象をうける。
かたや北光正宗の杜氏さんは、色白の女の子のような顔をしているから
ずいぶん対照的な同級生なのだった。
積善は、長野県ではめずらしい、花の酵母を使って造られている。
北光正宗は、全国で唯一、木島平で作られている金紋錦という米を使って
造られている。
晩秋から初冬へ酒造りの季節になり、
携わる方々も、体と神経を酷使する日がつづくこととなる。
今季の酒が仕上がり好く成りますよう。
それぞれのお蔵さんの新酒が楽しみなこととなる。