伯楽星の蔵元へ
神無月 四
宮城へ出かけた。
酒屋の峯村君と酒蔵の方々に混ぜてもらい出かけた。
宮城県大崎市。
伯楽星の新澤醸造さんを訪ねるのは、三年半ぶりのことだった。
酒蔵に到着すれば、丸い体の巌夫さんが迎えてくれ、
久しぶりの挨拶をして、蔵の中を見せてもらう。
かたむいた柱にひび割れた壁。一升瓶の残がいに
もろみが飛び散ったままのタンク。
あちこちに震災の名残りがうかがえる。
事務所には、ボランティアに来られた人たちの
応援メッセージの書かれた色紙が飾られていた。
倒壊のおそれのある蔵での造りはあきらめて
あたらしい場所へ移って造りを再開するという。
震災で地元の酒屋さんも被害を受けて
酒を売れなくなった。
それでもその分を県外の酒屋さんが買い取って
応援してくれたから、ずいぶん助かったという。
古い蔵の解体に新しい蔵の買い取りと、たくさんのお金がかかる。
そんなときにつくづくありがたかったのは、
日ごろの人の縁だった。
腹にたまった悩みを打ち明ければ、
それに答えて動いてくれる人がいて、負担を減らすことが出来た。
峯村君のおばあさんが亡くなったときに、
線香一本御参りをするために宮城からかけつけた。
香典を送って済ますというわけにはいかない。
そんな柄がみんなの力を呼んだとわかる。
どんな仕事をしていても、どんな暮らしをしていても
関わる人との縁をおもう。きっとさいごはそこにくる。
母屋に上がり、お昼ご飯をごちそうになっていたら
ゆらゆら揺れがきた。
外に出ましょう!の声にあわてて外へ飛び出した。
震度三。
同じ揺れでも、長野にいるときと全然緊張感がちがうと
かたむいている蔵を眺めた。