なかなか思い出せない
文月 九
高校の同級生と飲み会をした。
頻繁に会っている友だち二人、
久しぶりの友だち三人、
二十年ぶりに会う友だちがひとりと、
七人でべじた坊さんにて酌み交わした。
知り合って三十年、家庭のことや仕事のこと、
それぞれの近況話しを聞きあえば、
息子が野球をやっていて、試合のたびに、
手伝いに駆り出されるお父さんだったり
小学校のPTA会長をやっているお父さんだったり
いそがしくしている。
奥さんと離婚して、若い彼女と付き合っていたものの、
その彼女とも別れてしまったと、さびしく話す人もいる。
会社を造って社長になったり、大きな会社で、
たくさんの部下を携えて仕事をしている人もいる。
店を経営してるのだから、お前も立派な社長だといわれたものの、
どんぶり勘定の、ゆるい仕事で日銭を稼ぐ身は
社長と呼ばれるにはしょぼすぎる。
高校のクラスメートは四十八人いた。
すんなりと全員の顔と名前が思い出せないところに
過ぎた歳月の長さがうかがえる。
二十年前、ひろしに蕎麦屋で会ったとか、
十年前、病院でにしざわに会ったとか、
偶然会った友だちのことをそれぞれ口にしても
時間のスパンが長すぎて、
今はどうしているのか、まるであてにならない。
もう逝っちゃったやつもいるのかなあと気になるのは
大きな病気をしたり、同じ歳の友だちを
何人か見送っているからとわかる。
旨い料理と酒で懐かしい思い出話にふけり、
たまにはこうして会おうと、宴の席をあとにした。
帰り道、余韻をかかえてリタへ行った。
馴染みの好い友だちと酒を酌む。
歳を重ねるごとに貴重なひとときになると思いながら
白州とマッカランをちびちびと嘗めた。
次の日、同級生の名前を書き出してみたら
四十七人まで連ねたものの、あとひとりがわからず
悶々とする。
風呂に入って頭を洗っていたら、ひょいと思い出したのは
いつもぼそぼそっと低い声でしゃべっていた
原山洋一くんだった。