草津まで

へこりと

2011年07月29日 15:36

文月 八

台風一過を境に、賑やかなあぶらぜみの鳴き声が
路地にひびきだす。
ここへきて、暑さの穏やかな日があれば
一日雨降りの日もあって、
陽気の足取りがばらついている。
冷房の中で仕事をしていると、体が冷えて
足首もぴりぴり痛くなってくる。
ひと区切りつくたびに路地に出て、
陽の照りの中に身をおけば、かえって体がほっとする。
日曜日の夕方、仕事を一時間早く終いにして
温泉へと出かけた。
男友だち三人で草津をめざす。
菅平を抜けて上っていけば、空気もだんだん
涼やかになってきて、
草津の町に入ると、ここかしこに紫陽花が
今が見ごろの色を成していた。
素泊まり三千円の宿に着いたら、早速ひと風呂浴びる。
草津のお湯は酸がつよい。
石鹸を使わなくても肌がつるつるになるから
素肌美人のお湯と、女性の方に薦めたい。
長々湯船に浸かっていれば、冷房に固まった肩や背中の凝りも
ゆっくりとほどけてくる。
連れてきてくれた友だちは、またしても、
付き合っている彼女のことで悩みを抱えていた。
温泉は万病には効くものの、恋の病には効かないからなあと
しみじみうまいことを言う。
風呂のあと、居酒屋にておつかれさまの乾杯をした。
ビールを飲んで、麦焼酎のロックをおかわりすれば
爽やかな旨さがほてった体に気持ちがいい。
湯畑のまわりにはたくさんの観光客の人がいる。
もうもうと立ち上がる湯気を眺めたり、
土産物屋を物色したり、にぎわっている。
年輩のご夫婦に家族連れ、若い恋人同士の姿もあって
その中を男やもめの三人連れでうろつくのは、ちとかなしいものがある。
コンビニで酒のつまみを買い込んで、
持ち込んだ日本酒をちびちびと酌んだ。
ひきつづき話を聞けば、
おおらかに相手を信じればなんということもないのにと、
そんなことを思う。
いさかいあってもいっしょにいられるぬくもりをとるか、
さびしくなってもひとりの自由さをとるか、
思案のしどころはなかなかに決めがたい。
温泉に入って酌み交わし、話を聞くことぐらいはできる。
気のおけない付き合いが、気休めになればありがたい。