〆張鶴を求めて
水無月 七
毎日日本酒を酌んでいる。
気に入りの銘柄のひとつに村上の〆張鶴がある。
ぴんとした名前に違わぬ芯のある味わいで、
飲み屋で見つければかならず頼む。
上越市に住んでいる知り合いがいる。
年輩の飲み仲間の方で、月に一度長野へ来たときに、
宴の席をごいっしょさせていただいている。
越後の酒が好みだという。
〆張鶴も好きなのに、
あいにく近所に売っている酒屋がないとこぼす。
それならば送りましょう。
須坂の酒屋の新崎さんを思い出し、請け負った。
よく晴れた休みの日、
バイクにまたがりとことこと出かけた。
町を抜け、小布施に通じる道を行く。
パチンコ屋の信号を曲がり、まっすぐ行って曲がった先の
畑の前に店がある。
純米吟醸と特別本醸造を一本づつお願いして、
まあ、お茶でもとごちそうになった。
旦那さんが酒屋を始めたのは、平成元年のことだという。
当初は義理の絡みもあって、飲食店に売り込みをせず
店売りだけで商売を始めたという。
その頃、知人に頂いた〆張鶴の味が気に入って、
蔵元に取り引きをしたいとお願いをした。
すでに人気のあった銘柄は、なかなか扱いが叶わない。
〆張鶴を扱えるなら、他の銘柄はなくてもいいと
思いを伝えたところ、先代の社長がその意を酌んでくれ、
二年ちかく待って、扱うことができるようになったという。
蔵元から取り引きを始めたいと電話をもらった日、
あまりのうれしさに、三人の子供たちに
それぞれ一万円づつ小遣いをあげたという。
お付き合いが始まって二十年。
今でも春と秋には蔵元を訪ねてゆくという。
新崎さんは、三番目の息子さんが修行先から戻ってきて
いっしょに商売を営んでいる。
〆張鶴に八海山、越の寒梅に真澄に樽平、
すでに名の知れた銘柄に、
澤の花に山和に写楽に大那、
小さな蔵の若手の造る銘柄が増えた。
そのためにお酒を管理する冷蔵庫も増やしたという。
冷蔵庫の電気代払うために働いているようなもんっすよ~。
いつぞや息子さんが笑って話していた。
旨い酒にありつくために働いている身は
がんばっている酒屋さんを応援したい。
そう言ってもらえると救われる・・・