旅立つ春

へこりと

2011年03月31日 12:02

弥生 十一

新年度が近くなり、新しい場所へと旅立つ人がいる。
町内に双子の男の子がいる。
この春から、二人そろって無事の大学進学と相成った。
お兄さんは三月の下旬まで受験の結果定まらず、
ずいぶんやきもきしていたものの、
晴れて東京の大学へ進路が決まり、弁護士の将来を目指すという。
弟さんは高校の三年間、サッカーにあけくれていた。
県下でも強い学校だったから、勉強まで手がまわらず、
三年生の夏にサッカー生活が終わってから、猛勉強が始まった。
半年間の追い上げが実り、見事志望校に合格できたのは
サッカーで鍛えた忍耐力と集中力のたまものと感心をした。
おだやかな海の町で、動物のお医者さんを目指すという。
朝から春らしい陽気の日、
お兄さんが、今日出発しますと挨拶に来てくれた。
わざわざ顔を出してくれるその気持ちがうれしいぞ。
体に気をつけてがんばってと見送った。
馴染みのおでん屋の常連さんにドコモの課長さんがいる。
ひとりで飲んでいるところに会えば、
いっしょに酌み交わさせていただいた。
ときどき部下の方々引き連れて、飲みに来ているときがあった。
楽しそうに顔を真っ赤に酔っているさまは、
ともに働いてくれる方々への好意が感じられ、
眺めているこちらも、燗酒の好い肴にさせていただいた。
電話がらみの困りごとがあった時は、
ずいぶんときめ細かく面倒を見ていただき
人との関わりひとつ見ても、縁を大事にする方とわかり
知り合えたのがありがたかった。
この春から東京への転勤が決まり、
他の顔馴染みの常連さんも交え、送別会をやることになった。
ところが当日おでん屋に出かけたら、部下の身内に不幸があって
遠路、お悔やみに行かなくてはならないと連絡がある。
不測のことはしょうがない。
地震の影響で転勤も一ヶ月伸びたというから、
また来月、盛大に仕切りなおしですなと言いながら
主賓のいない席で集まった方々と酩酊した。
春、住む場所や仕事の変わる人もいれば
同じ場所で同じ仕事をしてゆく人もいる。
桜の季節を迎えるたびに、今年の春に生きのびられた気持ちになる。
ひとりひとり、気持ち新たに迎える春と思う。