心機一転で
睦月 十四
西ノ宮神社で初恵比寿があった。
十九、二十日の二日間、
今年の商売繁盛を願う、たくさんの人が訪れる。
住んでいる町がこの神社の氏子になっている。
二十日の朝早く手伝いに出かければ
七時前から、お種銭をもらう人や
福引きを引く人の長い列が出来ていた。
神社の周りでは縁起物を売る屋台のおじさんたちが
白い息を吐きながら開店の準備をいそいでいる。
神社の入り口では、だるまやしめ縄にお札、
去年の縁起物を焚いている。
福引き券を配りながらときどき暖をとっていれば、
白い煙の立ち上る、マイナス七度の空が
今日も寒々としている。
飲み仲間のひろみちゃんが仕事をやめた。
住んでいる町から歩いて五分。
蔵造りの店の集まるひと角にカフェがある。
長い間この店の店長として店を切り盛りしていたのに
このたび勤めをやめることになりました。
突然のメールが来ておどろく。
なにがあったのかと、忘年会の席で
みんなで顔つき合わせて話を聞けば、
組織で働くむずかしさや、
人付き合いのむずかしさがあり、
もうそんなにがまんしなくてもと思えるところもあり
無理もないとうなづいたのだった。
年が明けて二十日の初恵比寿の夜、
ひろみちゃんの最後の勤めの日、
飲み仲間みんなで集まろうとメールが来る。
退社祝いのワインを手ぬぐいでくるんで抱えて
足を運んだ。
飲み仲間みんなでテーブルひとつ陣取って、
カウンターの向こうのひろみちゃんの労をねぎらい
乾杯する。
みんなのたまり場だったから、
ひろみちゃんがいなくなれば、ここで飲むこともなくなると、
そんなことを思いながら、生ビールと白ワインを飲んで
竹鶴をちびちびストレートで味わった。
仕事をやめたら住んでいる貸家も引き払って、
実家のある山の町に戻るという。
寒いあいだ、ゆっくり身の回りの始末をして
暖かくなるころ、心機一転の道を歩いてゆければと思う。