だれだかわからない
睦月 八
年が明けて、雪のすくない日がつづく。
まともに雪かきをした日がなく、
手がかからずありがたい。
この冬初めて路地に積もった朝、安眠をむさぼっていたら、
向かいの家の奥さんと、隣の家の奥さんが
暗いうちから雪かきを始める音がする。
のこのこ起きだして、さてと構える頃には、
こちらの玄関先まですっかりきれいにしてあって、
恐縮したのだった。
雪の降らない日がつづきますよう、
ものぐさな思いで過ごしている。
近所の人が、姪御さんを連れて訪ねてきた。
大学生になる姪御さんは、年頃のわりに女っけがないという。
それではいけないと、化粧を教え、かわいい服を買い、
ついでに髪型も変えようということになり、
連れて来てくれたのだった。
どんな髪型にしたいのかと尋ねれば、
アッキーナのようにしたいと言われとまどう。
だれですか? 頭の中に?マークが飛び交う。
テレビを見るといえば、ニュースとときどきスポーツと、
思い出したとき、水曜日九時の相棒ぐらいが関の山だった。
燗酒つけて湯豆腐での晩酌に、
がちゃがちゃにぎやかな番組はいらないと
アイドルの出ているものは見ることがない。
暮れの紅白歌合戦で、AKB48も、初めて目にした始末で、
これがかのうわさのかたたちですかと眺めていた。
今の若い子は、みんな同じような顔で区別が付かないと
つぶやく母にうなづいたのもなさけないことで、
アッキーナにいたっては、名前を聞いて
中森明菜を思い浮かべてしまったのは、
時代錯誤もはなはだしく、はずかしいことだった。
仕事をさせてもらいながら、大学のことなど尋ねれば
にこにこ明るく答えてくれて、気持ちがいい。
女っけがないというけれど、澄んだ笑顔があるだけで
じゅうぶんかわいく、魅力あふれるのは若さの特権だと、
しみじみ思うのだった。