別所温泉にて。
睦月 4
別所温泉の、北向観音へ出かけた。
上田駅から別所線に乗って、
枯れ田畑の広がる塩田平を抜けて、
うつらうつらと揺られて行く。
別所温泉駅を出て、まずはひと風呂と、
あいそめの湯へ下った。
向かいの空き地では、親子が集まって、
積み上げられただるまを囲んでいる。
どんど焼きの日なのだった。
地元のおじいさんたちに混じって、
すこし熱めの湯でくつろいで出たら、
すっかりだるまが燃え尽きていた。
駅前のイタリアン、カピトリーノへおじゃますれば、
ガラス越しの厨房では、職人さんがふたり、
石窯でピザを焼いたり、パスタをゆでたり、
せっせと忙しい。
眺めながら、生ハムサラダでビールを飲んで、
赤ワインを飲みながら、ナポリタンで腹を満たした。
店を出て坂道を上がっていくと、
北向観音の細い参道は参拝客の賑わいがある。
祝日というのに参道沿いの食堂はどこも休みで
欲がない。場違いな雰囲気のアイスクリーム屋だけ、
客で混んでいた。
観音堂への急な階段を見上げたら、
杖をついたおじいさんが、
平家の落ち武者のようによろよろと登っていた。
あとにつづいて、観音様に手を合わせ、
上田に暮らす、友だち母子の無事を祈った。
見晴らしのいい境内をひとまわり。
北向観音から古刹、安楽寺と常楽寺をまわり、
家々の間を歩いていれば、
乾いた野原にすすきが茂り、遅い午後の光が
やわらかく照らしている。
ちいさな温泉街ののどかな風情に、
あてもなく歩いているだけで癒されるのだった。
こんどはゆっくり泊まりで来たいものと、
立ち並ぶ旅館を眺めた。
ふたたび、別所線に揺られて上田まで。
久しぶりの友だちに案内されたのは、粋亭という、
初めて伺う店だった。
気さくなご主人が営み、
肴の誂えにも細やかな気遣いのある、好い店だった。
今年初の上田詣でに、満足をしたひとときだった。
湯の町の石段きつし初観音。