お店の縁が
如月 3
友だちと、町内にあるフレンチレストラン、
ラ・ランコントルさんへおじゃました。
若いご夫妻が古民家を改装して開いた店は、
今年で2年目になる。
ランチやディナーのときに前を通れば、窓越しに、
シェフを務める御主人の、きびきびした動きが目に入る。
朝の5時に散歩に出たら、
すでに仕込みをしている姿を見かけたこともあり、
すごいなあと感心したのだった。
前菜からデザートまで、食通の友だちと語り合いながら、
ゆっくりしずかに、気持ちのこもった料理を堪能した。
子供のころ、中央通りの中ほどに、
香園というフランス料理の店が在った。
若かりしころの母の御贔屓で、
友だちや、仕事のお弟子さんを連れては出かけていた。
何度か一緒に行ったことがあったのに、
小学生には不相応な店だった。
美倉ややまのハンバーグやスパゲッティーや、
丸清のかつ丼のほうがいいのにと、
がまんしながら、わからない味を食べていた。
今のように、全国展開のファミレスがなかったころで、
地元のあっぷるぐりむの前身の、
チーズドールが有名だった。
いくつのときだったのか、なぜか、香園の御主人が、
あんな店、冷凍もんしか使ってないんだよと、
母にこぼしていたのだけ、
不思議と記憶にのこっている。
そののち、いつの間にか香園も店じまいをして、
趣きのある木造の建物もなくなってしまった。
個人の店がなくなって、町の彩りがさびれていた中、
ここ近年、
若いかたの営む美味しい店が増えているのは
喜ばしいことと思う。
いくつか縁のできた店に伺っては、
まいど豊かな時間を頂いている。
春の気配がしてきましたね。
そんなやり取りをするのも、
もうじきのこととなるのだった。