飯山へ
卯月 十
ひさしぶりに飯山へ出かけた。
桜が見頃と聞いたのだった。
夕方の飯山線は、帰宅する学生たちで混んでいる。
立ちんぼうのまま、二両の電車に揺られていく。
沿線の住宅街の桜が風に散っている。
替佐駅をすぎると、国道沿いに目を引く桜が並んでいた。
建設中の飯山駅が見えてきて、
新幹線の開通は、もうすぐのこととなる。
ひとつ先の北飯山駅で降りたら、
ほどなく飯山城址の桜が見えてきた。
坂道を上がっていくと、右手の公園で子供たちが遊んでいる。
四つ並んだ屋台のひとつで、
おじさんが焼き鳥とおでんを売っていた。
石垣の階段を上がったら、
満開の桜がむかえてくれたのだった。
桜の下、千曲川が流れ、はるか残雪の山並みが悠々しい。
提灯に明かりが灯り、
はやばやの団体さんが、花見の支度にとりかかる。
石垣に座っていた女の子は、
アイスを落としてお母さんに叱られている。
青い運動着の女生徒ふたり、
焼き鳥をかじりながら桜を見上げて、なかなかしぶい。
桜のむこうを見下ろせば、
学校のグラウンドで、子供たちが部活に精をだしている。
会社帰りのおじさんたちが、ぞろぞろ坂を上がってきた。
屋台を覗く顔もゆるみ、
おそい桜を待っていたとわかる。
ゆっくり愛でて、葵神社にお参りをして坂を下りた。
坂の下に稲荷大明神があった。
小路に沿ってぶら下がった行燈には、
尊敬し、目標にできるライバルを
暑さ寒さも自然に感謝
りっぱな言葉が書いてある。
いちばんさいごの行燈には、
知恵をしぼって人の三倍働こうとあった。
仕事をさぼって花見に来た身は肩身がせまい。
川沿いの道へ上がったら、菜の花が揺れていた。
連休のころには、菜の花公園も、
いちめん黄色に満たされる。
ひと気のない商店街からわき道へ。
桜の余韻で一杯と、六兵衛さんの戸を開けた。
地野菜の盛り合わせと、サッポロラガーでひと息ついて、
川のある、ちいさな城下町の風情が好い。
菜の花を眺めに、また来たいのだった。
いわしの刺身と豊賀で締めて、駅へ行けばまだ間がある。
うろついて、店先の北光正宗の樽を目にとめた。
迷わず暖簾をくぐり、はしご酒と相成った。