空き家を活かして
皐月 六
善光寺のまわりも、すっかり緑の季節になった。
朝の陽気もおだやかになり、
お参りがてら、新緑の輝きをながめながら歩けば
気分もさっぱりすがすがしい。
住んでいる東之門町にあたらしい店が出来た。
年季の入った空き家を直して、
鯛焼きならぬ鯉焼きという菓子を売っている。
ホームページを拝見したら、
店を営む御主人は茶道の心得があり、
ふぐの調理の資格も持っている。
おまけに、日本酒の利き酒師の資格も
あるというから見のがせない。
先日ひとつ買いに出かけたときに
その旨尋ねたら、
日本酒が好きなものでと返事がきた。
おなじ町内になったよしみ、
折を見て一献酌み交わしたいと、
甘味処の店内で、朝から辛味の話となった。
ここ最近、善光寺のまわりや静かな住宅街の
空き家を利用して、
店を始める人がふえている。
床屋のあった桜枝町のよつかどの建物は
台湾茶の店になった。
そこから東へ二百メートル、
郵便局のむかいの美容室の空き店舗は
雑貨屋さんができるという。
ながらく空いたままだった焼き肉屋の店は
やはり雑貨屋さんになり、
すっかり景色になじんできた。
春のはじめにオープンしたケーキ屋は
ビールとワインがメニューにある。
休日の晩酌まえの間が空いたとき、
キッシュやチーズケーキでかるく一杯できるのは
なんとも気のきいたことだった。
横町の、呉服屋の空き店舗も喫茶店になるといい、
このごろ工事の人の姿が見えはじめた。
先日、西町のスター商会で買い物をした帰り、
通りを上がって行ったら、
ながらく空いていた成金まんじゅうの店を
男と女のかたがかたづけていて、
ここもまた店をはじめるのかと興味ぶかくながめた。
安くて旨い今川焼きのような成金まんじゅうは、
育ちざかりの小腹を満たすのにちょうど好く、
学生たちのたまり場になっていた。
夏にはかき氷も登場して、
店先のアイスボックスにはコーラやラムネが
冷えていた。
学校時代の友だちと酌み交わし、
昔の話にながれれば、
成金まんじゅうなつかしいねと、いまでも話しに出る。
あれだけさんざん食べたのに、
いまだ成金になれないでいる。